デビルマン

□後悔に苛まれて
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分かっていたんだ。
明は俺の事、ただの親友、としか見ていない事ぐらい。初めから分かっていた事じゃないか。明には、奴が居る。牧村美樹。くそ、あの女め………。俺の明を奪いやがって……。いつか絶対、……………。

月が天高く上がっている時間帯。深夜だ。俺は一人、公園に来ていた。虚しくなっていたんだ。色々と、な。
もう直ぐ夏が来るのか、風が湿った感じで吹いていた。滑り台の上の方に座って、先程買ったペットボトルのキャップを開け、俺は水を飲んだ。
はぁっとため息が零れる。

こんな事なら、こんな気持ちになるなら、好きにならなければ良かった。

けど、そんな事は無理だ。俺は明に出会ったその時から、恋に落ちていたんだ。たとえ過去に戻ったって、無理だろう。俺はきっと生まれ時から、明を好きになる運命だったのだろう。たとえそれが、報われない恋だとしても。
「明………」
いつの間にか俺は、明の名前を呟いていた。
今直ぐ会いたい。会って、抱き締めたい。彼の声を聞きたい。けど、それは無理だ。こんな時間だからな。デーモンでも出ないとな。
ふと、携帯が震えた。誰だろう、こんな時間に………。見て見ると、何と明からだ。俺は慌てて出た。
「明!」
『………そんな大声出さなくても、俺は居るぜ。今平気か?』
「ああ、勿論だ!」
何だろうな、この胸の高鳴りは。………嬉しくて当然か。身体は素直だな。
『実はよ、今日学校でデーモンの事を話されてさ。まぁ、授業中に出た話題なんだけどな。やっぱ、焦るよな』
「へぇ〜、出たのか」
………他愛の無い会話。分かってはいた。期待は、していなかった。
『それでさ!中二病の奴が、それは人間が堕落した結果だ。とか言い始めてさ〜。もう笑いが止まらなかったんだぜ!』
明の嬉しそうな声。本当なら、顔も見たい。触りたいんだ。
「………明、今から俺の所に来れないか?」
『あー、ごめん。今日は無理だな。外出禁止令が出てさ』
「………そうか」
胸にぽっかりと空いた穴。それを埋めたくて明を俺の所に連れて来ようとしたけれど、無理だった。
明は俺よりも、牧村家を選ぶのか………?
『明日?今日の朝なら絶対会えるからよ!』
「……分かってる。学校に行く前に、お前の所に行くよ」
俺はもう電話を切ろうと思った。これ以上明の声を聞くと、ただ虚しくなるだけだから。
『………了』
「何だ?」
『俺、お前の声が聞けて良かったよ』
明……?
『何だか、さ。了の声を聞きたくて。………だから電話したんだ』
「………また、明日な」
『ああ。じゃあな』
そこで切れる。

「ぅぅ………」
明、反則だぜ。その言葉は………。俺はいつの間にか泣いていた。胸が張り裂けそうなんだ。多分明は、そんな深い意味など込めていないけれど。けど、俺にとってはとても嬉しい言葉だった。
こんな姿、明には絶対見せられないな。
俺は泣くだけ泣いて、ふぅっとため息を零していた。疲れた、と言うよりすっきりした気分だった。久々だ。こんなにすっきりしたのは。
俺は星空を見つめた。都会だから、あまり星は見えないけれど。

もしも俺が女だったら、明と正式に付き合えたのに。

そう思ってしまうのも、無理はないだろう。運命とは、皮肉なものだ。
抗えないように出来ている。


滑り台から下り、俺はもう帰る事にした。
朝になれば、明に会える。そうだ、朝になれば………。


明、俺の気持ちに気付いてくれ。少しでも良いから。俺がお前に想ってる事に。そうすれば、こんなに虚しくはならない筈。
明ぁ………。


明の事を好きになった俺自身が憎い。
人を好きになって後悔したのは、明、お前だけだ。
だが俺はお前を嫌いにはならない。なりたくないんだ。ずっと、好きでいたい。たとえそれが、一生叶わない片思いでも。一方的な愛でも良い。俺は、明を好きなままでいる。たとえ何があろうとも。誰かが邪魔をしようとも。

明、一度だけで良いから、………………。






俺の事を、好きって言ってくれ。嘘でも良い。感情も籠っていなくて良いから。
それが俺の、最初で最後の願いだから―――――















END

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