雪華

□壱rin
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ここには、石矢魔にある石矢魔高校というものがある。


不良120%という県下最凶の不良高校であり、
そこには東邦神姫という東条・邦枝・神崎・姫川とトップを飾る4人がいたがこの中でも
この4人以上に強い者が、この学校にはいた
かつて、神崎・姫川に続き邦枝までもを倒し、石矢魔のトップ、東条を倒した者…それが後に全国の不良たちを恐怖のどん底へと落とす男
子連れ番長 アバレオーガこと、男鹿辰巳、その人だった。



その時、男鹿は古市と聖石矢魔の屋上に来ていた。





「おい、男鹿!なんだって屋上に……」



「いや、ベル坊がよ…」


「ダアッブ!!」




黙ってオレについてこい!と言いたげなベル坊を小脇に抱えながら、
男鹿はベル坊の気が済むまで付き合ってやるしかないなと半ば呆れたように古市と頭を振った。








「………―――見ィつけたァ…」





すると、突如、空に光が差した。

そう思うと同時に、上から何かが降りて屋上一帯に爆風を起こしながら落ちてきたそれはフェンス上へと着地した。

あれだけの威力を出しながら。フェンスはへしゃげる所か、風に吹かれたように金属音を小さく出すだけで済んだようだ。

そんなことを気にしているまもなく、男鹿や古市は状況に追いつくことで精いっぱいだ。




「っ…!?」



「な…っ! 空から……人!?」




男鹿と古市が目を丸くしながら、フェンスに立つ男に目を向ける。

男は黒いコートを身にまとい、長い襟足を風に揺らしながら、少し上がった口角をさらに引き上げ、その目に一点 ベル坊を映し出し立ち上がった。



「やァっと見つけたァ、ベルゼ様…!」



ベル坊にそう声をかけると、フェンスから降りベル坊に向かって一歩踏み出すと、
男鹿がそれを遮るかのように左肩をはった。



「……何者だ、てめぇ」



男の表情が一瞬固まり、うっすらと目を開け男鹿をとらえた。




「―――失せろ、下男




ふたりは、折那から感じる確かな殺気に言葉を失った。

本物の殺気を浴びたことがなかったのだろう
古市は震える足をどうすることもできず、身じろぎ一つ、することが出来なかった。



「アダッ!アーダッ」


ベル坊は男に向かって声をあげると、
男はすぐさま殺気だけを解き 目を丸くしてベル坊を見つめた



「――っ…坊ちゃん…? 随分とご立派に!」




殺気が消えたとたんに古市は抜けそうになった腰を踏ん張り、男から目が離せずにいた。


男は男鹿の背中にいたベル坊を引き剥がし抱き付く。

男は泣いていた。




「覚えていくれたのですね、坊ちゃん…っ!
大魔王からの命を貰うのに時間をかけてしまい、ベルゼ様の住まう環境と契約者とその家臣をなかなか見ることもできずに……節足らぬばかりです…申し訳ありませんっ
ですが、私もこれからヒルデガルダ以上に坊ちゃんに尽くし坊ちゃんを思い坊ちゃんを支え坊ちゃんの成長をサポートし
坊ちゃんのお世話をし共に坊ちゃんの契約者のサポートもしますので これからも坊ちゃんのお側で見守らせ(てください)」



坊ちゃん坊ちゃんうるせーんだよ!!
てめー何者だって聞ーてんだろーが!
だれがげなんだっ」



(…男鹿、下男の意味知ってんのか?)




男はベル坊を腕に抱き、男鹿に向き直る。そして笑顔を絶やさずに首を傾げた。




「えっと、君たちはだれかな
……まぁなんとも、強そうに見えないけど まさか 君が契約者だと?」






「――だったらどーした」






「ハッ―――…… そこの銀髪の君 可愛いね!お名前は?」


「はっ!?」



スタコラと古市に迫る男。
彼は可愛い子が大好きなのであった。

古市の手をさっと取ると、優しくそっと包み込むように握る。



「君は契約してないの?」



「し…してない、けど…?」



「ウンウン、じゃあオレと契約し

ドズッ

男がいい終わる前に男鹿が彼の首に回し蹴りを入れる。
普通、人間ならばここで果てなく飛んでいくところだが、彼が人間でないことははるか上空から降りて来た時に実証済みだ。

しかし、彼はまるで何事もなかったかのように涼しい顔をしてびくともしない。


どうせ悪魔等の類であろうことは重々承知。
しかし、ああも面と向かって喧嘩を売られては、買わない通りが男鹿にはなかった。




「何者だってきーてんだろうが、変態」



「――……手が早いなぁ、最近の人間の子って みんなこうなの?」




男は肩にかかってる男鹿のその足を掴むと片手一本で身体を宙に一回転させ地面へと叩き込んだ。




「!? ドゴォオッ ぎ…っ…ぐ…!!!」



男鹿は受け身をとれず、そのままコンクリートへ、言葉の通り埋まった。

彼はゆっくりと男鹿を見やり、型に乗った坊ちゃんを古市に手渡す。




「それでも坊ちゃんの契約者かい?
少なくともオレを動かさないと、ただのクソだよ」




「……………っ!」



古市は次々と起こる信じられない光景に目を見開くばかりだ。




「まぁ、オレの攻撃を受けて声を出せたのはまだ褒めてあげるよ
ほとんどが声を出す前に遠心力で肺が押し付けられて窒息寸前だからね」




いくら文句を言ったとて男鹿が古市にとっての腐れ縁で幼馴染であることに変わりはない。
慌てて男鹿のもとに駆け寄る。




「お…男鹿……っ!!」




「大丈夫、死んではない と思うよ」




「っ………」





「……そんなに怖がらないでよ…
可愛い子には手を出さないよ、少なくとも…ね……」




怯えた顔で男を見返す古市に近寄り、彼の頬を撫でるように手を滑らせると、
先ほど飛んだであろうのコンクリートの破片で切った古市の頬に顔を近付け、
ぷつりと切れた皮膚から血を舐めとる。

古市はびくっと肩を震わせ顔を真っ青にすると、目を見開いたまま顔を離した男の顔から距離をとった。





「なん…っ!」



「………君、名前おしえてよ。
あぁ、俺がまだ名乗ってなかったよね
俺は ベルゼ様の侍臣で魔王の近侍の折那」




ヨロシクネといい、男鹿の学制服の胸倉を掴み、コンクリートから引っ張り出すと、仰向けになった彼の顔をぺちぺちと叩く。



「おーい、起きなよ」


男鹿の首根っこを掴み軽々と持ち上げると、胸を耳に当て、耳に男鹿の顔を近づけた。



「――…やりすぎたか」




折那は口で手袋を外すと、ぱちんと指を鳴らした。
と同時に、男鹿の体が跳ね上がり男鹿が勢いよく跳ね起きる。





「―――…じいちゃんっ!!
























「は……ここは…」



「じいちゃんと感動の再開ができたかい?」




「はっ …てめぇ、さっきはよくも…!」




「俺は…ベルゼ様の侍臣で魔王の近侍の折那 ヨロシクネ☆
早速だけど、銀髪君!俺の契約者にならない?」




無理です








        
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