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□サクラ・サクラ
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ネムルサクラ



ナツの鼻を頼りに、森を駆け抜けるグレイとナツ。
その後ろに、ウェンディとシャルル、そしてハッピーが続き、無言でただ水色を捜し求め、駆け抜ける。

風にザワザワと揺れ、時折笛のようなピューピューと音を立てる森が、まるで泣くように、寂しさを書き立てる。

ルーシィとジュビアが襲われた現場では、水に濡れた土と、無数の足跡が残っていたが、ジュビアの痕跡はなく、ナツは慎重に血の臭いを嗅ぎ分ける。

それからほんの数分進んだ、小道の袋小路。


見事な大木の桜の根元に広がる赤い血の海を見て、一向は息を飲み込んだ。


一面に広がる桜の花びらは、徐々に赤黒くグラデーションのように変色をし始め、その中心に横たわるジュビアの姿は

トレードマークのアクアブルーの髪の毛も血に染まり、白い肌は蝋人形のように不自然なほど青白い。


「ジュビア!!」


そんな目を覆いたくなる状況でも、ナツは一目散にジュビアの元に駆け寄ると、それに続きウェンディがジュビアの元へと続く。


回復魔法を唱えるウェンディだったが、ジュビアに反応はなく、まるで人形のように眠り続けていた。


「とにかくギルドへ!!」

ウェンディの魔法が効果を示し始めたのは、ウェンディ自身の魔力が切れる寸前

のこと。

フラリと眩暈を起こしながらも、治療を続けるウェンディに応えるように、ようやくジュビアの胸が小さく上下に動き出した。


ためらいもなく、血の海に横たわるジュビアを抱きかかえるナツの腕に、そして服にジワリと染込む血液。


そんな光景を目の当たりにしたグレイは思わず嘔吐感を覚え、口を手で塞ぐ。


思考回路はすでに停止したのか、ただ目の前で力なくナツに抱きかかえられるジュビアを呆然と見つめていた。


「俺の・・・せいだ・・・」
「グレイ?」

「俺が・・・あの時・・・ジュビアの怪我に・・・」

冷静さを失った己が恨めしい。
後悔の念がグレイを襲い、グレイは無意識に涙を流し、うわ言のように同じ言葉

を繰り返していた。

「そんなことは後で後悔しろ!」

ナツはグレイを怒鳴りつけると、グレイの腹部を蹴り上げた。

「グレイ、今は少しでも早くギルドに帰ろうよう・・・」


蹲るグレイにハッピーが寄り添い、立ち上がるように促した。





---


「ミラさん、ジュビアは?」


いつもより静かなギルドの中。
食器を片付けるミラに、ルーシィがカウンターに腰掛けながら聞くと、言葉には出さず、静かに首を横に振り奥の医務室の方へ目線を向けた。


「ジュビア・・・大丈夫だよね・・・」
「そうね・・・きっと、助かるわよ!!」



そういいながら笑顔を作るミラが痛々しい。
無理に作られたミラの笑顔に、ルーシィも無理やり笑顔を浮かべた。



ナツがジュビアを連れ帰ってから、1週間。

血まみれとなったナツとその腕に抱かれたジュビア。
ギルドに居合わせたメンバーは、抱かれたソレをジュビアだと一瞬認識ができずに居た。

ウェンディの魔法で一命を取り留めたジュビアだったが、いまだ目を覚ますことは無く、静かに眠り続ける。


ただ、静かに上下する胸の動きだけが唯一、ジュビアが生きている事を示していた。



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