御本(短編)*桂っぷ*

□こっち向いて♪
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「千和、お前とキスがしたいのだが…」

『え?』



プチっと・・・ノートの上でシャーペンの芯が弾けた。

思わず脱力してペンが手の中から滑ってノートに転がっちゃった。


だってまず、小太郎くんに“お前”なんて呼ばれたの初めて!!

それからえっと・・・・

キスしたのはこないだここに来た時…私がうっかり寝ちゃった時にされたのが初めて。

まだ梅雨明けしてないから、あれが最近のことだったとわかるんだけど

実は思い返すと凄く前のことみたいって思ってたんです。



『ど、どして…訊いちゃヤダよッ・・・・恥ずかしいよ…』

「いや、でも此間のようにしては卑怯だろう。俺なりに反省した結果なんだが…そうか。ダメか。」


小太郎くんは、瞳を逸らしてまた勉強に戻っちゃった。

シャツを捲ってあるその腕がまたペンを走らせる為に動き出しちゃう。



『べ、別にね?ダメって言ったわけじゃないよ?』

「そうなのか?」



また小太郎くんがこっちを向いてくれた。

何回も想っててもやっぱりカッコいいな(照)


「出来れば今すぐしたいんだが…」

『だ、だからあのね?そうやってちゃんと言われるとなんか…スゴく照れちゃうんだもん。だから言わないでいいよ?…小太郎くんにま、任せますッ』


恥ずかしいよッ!どうしよ!任せるなんて言っちゃった!

言っちゃったからには任せるしか・・・っていうか待つしかないよね?!

もう!とにかく勉強とかしちゃえっ!


「ならば、勉強中にすまんな…千和」

『ピク…』



肩を抱き寄せられた。

ダメだ!!もう!!これって余計緊張しちゃうよ!!



『ま、待って!!小太郎くん!今はそっち…向けない』


今向いたらこんな真っ赤な顔見られてチューされちゃうんだよね?ダメだよ!!

肩を抱かれたまま・・・しんとなって

部屋中に時計の音がカチカチ聴こえる。



「恥ずかしいという理由なら…俺も同じだぞ?ただ…今日は俺の誕生日だからな。少し気を大きく持っているだけだ。」



あ、そっか…。それでなんだね?

肩から重みが退いちゃった。と思ったけど


『ピク・・・!』


今度は腰にぎゅ・・・・っと圧迫感がきた。



「千和は俺に、誕生日のプレゼントをやってるとでも思っていてくれ。だから今日は・・・少し俺の言うことを聞いてくれ。俺も今は、それ以上は望まぬつもりでやるから・・・許してくれるか?」


だったら・・・



『うん。そだね。していいよ?私、恥ずかしいのガマンしてみるから』
「いや、別に恥ずかしいことをガマンする必要はない。それならできれば見せていてくれ。誕生日の記念にこの瞳と胸に焼き付けておく。」



さらっとまた私の恥ずかしさを悪化させるようなことを言われちゃった。
小太郎くんのこういうとこ時々困っちゃう。


『ダメだよッ・・・目、閉じてして?私もそうするから、同じようにしてくれないとイヤ。』
「っ!お、お前はなかなか俺を困らせるのがうまいな。そんな顔で頼まれては・・・その・・・堪らん(照)」


小太郎くんが髪をしゅっと振ってそっぽを向いた。

私どんな顔してたの?もしかして今の小太郎くんみたいに瞳を戸惑いに揺らしてた?



ねぇ、だったら小太郎くん・・・。

そっぽを向いた彼の腕捲くりの袖をぷいぷいと引いた。

そしたら・・・


「っ!!や、やめてくれ・・・それはいかん。俺の今までの攘夷が決壊しかねんっ」



真っ赤な顔を手で覆って隠す小太郎くん。
でも、その反対の手は私の腰を寄せたままだよ?

これって・・・・



「全く・・・適わんな、お前には。大好きだぞ、千和。だからそうだな、その可愛さは・・・・」


(ずっと俺だけに向けてくれ)





真っ赤な私から、ささやかなバースデイプレゼントがちゅっとひとつ奪われた。


でも本当はちゃんとお誕生日プレゼント用意してたの、今はナ・イ・ショ♪


ねぇ、だから小太郎くん、もう一回・・・・





《こっち向いて♪》




fin.2013/6/26 happyhappybirthday! kotarou!


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