御本(短編)*退くん*

□退くな青春!〜オレノセンセ〜
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「先生…俺、あなたのことがずっと好きでした」

『退くん…』






今日卒業する3Zの教室。

ひとりぼっちで誰もいなくなったグラウンドを眺めていたら

白衣の可愛い先生の姿が見えたんだ



「今日も先生は可愛いなぁー…保健室行くべきかな?」



でもその隣に

俺と同じ制服の知らない奴が居て

向き合って話込んだりしてる



「…なんかお腹痛くなってきた」




全速力で誰もいない廊下を走って、階段をいつもより飛ばして降りて…



「ハァ…ハァ…ハァ〜…」



息を整えて扉に手をかける

保健室の鍵は開いてた




「先生の匂いだらけ…」



俺の知ってる先生はこの部屋の匂い

いつでも陽当りのいいここは陽だまりの…太陽の匂い



「早く戻ってこないかな」



薬品と太陽の匂いに包まれて

いつものこのベッドでちょっと君を待つ


いつもここで君を想ってた


廊下から聞き慣れたリズムの足音がする




『…今日は来ないかと思ってた』




先生の手には咲いた桜の小枝が



「うん、そのつもりだったんだけど…ちょっとこっち来て?」



手招きして俺の前まで先生を呼んだ



『ねぇ…退』

「ちょっと黙って?」



ベッドに腰掛けてる俺よりちょっと高いところに



「今日のアイメイク、張り切り過ぎだよ?」



先生のつぶらで愛らしい瞳がある

歳上で俺は彼女を下から追っかけて・・・

どうやっても追いつけない差だけど


年下なりに頑張ってたの、わかってます?



「先生…俺、あなたのことがずっと好きでした」

『退くん…』



年下なりのいつものイジワル

どうせさっきの…告られてたんでしょ?

その花だって貰ってきちゃったんだろ?

でもダメだよ。

そんな困った表情(かお)


欲情するでしょ



「…先生」

『…ねぇ、ありがとう。毎日、私に好きって言ってくれて…幸せな3年間だったわ』



花の様に可憐に笑って差し出してくれたのは



『花束は用意できなかったけどきっと最後にここに来てくれると思ってたからこれをやっと見つけてきたのよ?』



君の可憐さには敵わない桜の小枝



『…たまにはここにも遊びにきて?』

「そうだね。」



いつも先生の部屋ばかりで愛し合うんじゃなくて…



「時々ここに忍びこむよ!それでまた…」

『きゃ…っ』



ジミーだって

いつかこうして逆転してみせる


君に“あなたには敵わない”って言わせたい



「こうしよう?」



ベッドに君の可憐さと無防備を押し倒して、今は取り敢えず



「こんな俺に振り向いてくれてありがとう」

『うん・・卒業おめでとう!』





照れ隠しに今日までの青春で覚えた甘いキスを送ろう







ありがとう

最後の俺の“可愛いセンセ”。




end.→あとがき

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