御本(短編)*退くん*
□sweet trick♪
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「え?キミ、女子高生なの!?」
『そうですよ?』
鼻にツーンっとやってくるカラーリングの液のにおい
私の担当の美容師さんはあっちで今日は多分彼女さん?の髪をカットしてる土方さんだけど
いつもシャンプーとカラーをしてくれるのはこの山崎さん。
襟足がちょんと跳ねてて少し幼な顔の…このお店ではジミーさん(笑)
だけど…
「ビックリした。そっか、今時の女子高生って大人っぽいんだね(苦笑)ていうか、俺が童顔なだけかな?」
『や、山崎さんはおいくつなんですか?』
「え?俺は…ゴメン。やっぱ秘密にしとくよ(苦笑)…塗り終わったからこれで少しおくけど滲みるとこない?」
『あ、はい。大丈夫です』
「それじゃ…えーっと確か桜(サクラ)ちゃんはコーヒーが好きなんだよね?ブラックだっけ?」
『は、はい。そうです!』
「持ってくるね。ハハ…やっぱ桜(サクラ)ちゃんは俺より大人っぽいや。俺ブラック飲めないよ(苦笑)」
苦笑いしたまま山崎さんはあどけない横顔を私の胸に残して行ってしまう。
はぁー…キンチョウした。
だけど…私がコーヒー好きだって覚えててくれたなんて!スゴイ、山崎さん。
そ、それに下の名前…呼んでくれたよね?!ヤバかったよぉ!!覚えてくれたのかな?
だけど、教えて欲しかったな…。
(山崎さん…何歳ですか?…下の名前、なんていうんですか?)
ダメだぁ…。イメトレしてきたけど絶対言えない気がする。
私がここで髪を切るようになったのは4ヶ月前ぐらいから。
学校の友達に最近人気の美容室があるって教えてもらって、少し遠いんだけど来てみた。
なんかスゴイイケメンの美容師さんがいるって…でも1人はオジくさいしゴリラだからアレだけど気にしなきゃ遠くても行く価値あるって言われて…
そして来てみたら…友達は教えてくれなかった(眼中になかった?)人が居たの。
少し高い少年声で「いらっしゃいませー!」って一番に気付いて来てくれた人。
黒髪で、少し長い前髪がなんだかちょっと女の子みたいでカワイイって思った。
だけど…視線を落としたそこにね、白いカジュアルシャツを捲くった袖からちゃんと男の人の筋張った手と腕が見えて…もういっきに私…ヤラレタの(苦笑)
つまりギャップ萌えってやつでやられちゃいました。
それで…好きになって…
だって…山崎さん優しいし…わたし、土方さんと沖田さんは…もうかっこよさの次元違いすぎる気がしてなんか…ダメだもん。
担当は『友達の紹介です』って言ったらその子と一緒の土方さんになっちゃったけど…山崎さんはまだカットやってないみたいだし…
でも結果オーライかな?…もし山崎さんにカットとかされたら…私、鼻血出しそう!
「桜(サクラ)ちゃん、お待たせ。熱いから気をつけてね?」
『!!ハ、ハイ!!アリガトウゴッザイマス!』
「え?大丈夫?(笑)どうかしたの?」
トリップ中に声かけられてばっちり動揺が声に!!
笑われたことにモチロン俯いて
「桜(サクラ)ちゃん?あ、もしかして土方さん見てた?…ほんとあの人は仕事してるとカッコよさ増しちゃうからさ(苦笑)神様はあの人に二物以上与えてるよね?沖田さんもだけど。贔屓がキツイよね?」
『あ、えっと』
「あ、ゴメンネ?ちょっと先輩のグチ言うとか…たまにはさ(苦笑)けどお客さんにするのはナシだな。やっぱオレまだまだだね。ゴメンネ(苦笑)」
『い、いえ…私でよければ…あの、また聴きます』
最後は呟くように小さく小さく言ってみた。が、がんばった!
「!!…ホント?じゃあ、お言葉に甘えて…グチはまた今度聴いてもらうとかで…あの、桜(サクラ)ちゃんさ、俺のカットモデルやってくれないかな?」
『カ、カットモデルですか?!』
「あ、ダメかな?(苦笑)まぁ今日土方さんにカットしてもらっちゃうからアレなんだけど、一ヵ月後に前髪だけとかでもいいんだけど…どう、かな?」
『や、やります。オネガイシマス。』
断る理由なんて私にはどこにも…ひとつもないから、真っ赤かがバレるとか忘れて答えた。
「…?…ん。アリガト!」