御本(短編)*土方さん*
□宵に逢えたら(前)
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私が真選組の皆さんとお会いしてまだ3日。
全く身勝手におしかけてきたような私に隊士の皆さんは本当に優しい。
一番最初は曲者(くせもの)のはずだった私は、すっかりここにいる唯一の女中に変身している
それだけで十分過ぎる幸(さち)なのに、毎日、会えば必ず話しかけてくれる
近藤さん、沖田さん、山崎さん、そして土方さん。
土方さんは言葉少なだけれど、怖さはもう過ぎ去っている
そんな彼らに今日は、どこで会うだろう?
誰と最初に会うだろう?話すだろう?
そんな風に身の程の割りにはつい楽しく考えてこの3日は毎朝を過ごしている。
3日目の本日も、私は慣れないなりに女中としての勤めに力を注ぐ。
隊士の皆さんよりやや早めに起きて洗面所をお借りする。
まずはなんといっても朝食だから、自室で身支度をぴっと整えたらまっすぐに食堂の台所に向かう。
ここでは、昨日・一昨日と誰にも会わなかった。
私に宛がわれた部屋からは食堂までやや遠い。
今はまだ冬の朝ぼらけ。
渉(わた)る廊下の隅々までしんと冷えている。
そんなところで・・・
本日、最初に出会ったのはこの人でした。