御本(短編)*土方さん*

□しあわせさがし
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『ねぇ、トシ。ヨツバあげよっか?ほら!』



天気が良くて、いつも自転車のニケツで走りすぎる川の土手沿いに下りてみた。

今日はテストで早く帰れてよかったかも。




「・・・よくこの短い時間で見つけられたな、こんなの。」




草に寝転ぶ、さもさわやか風なトシがそれを受け取って褒めてくれた。

嬉しいっ。




『私、ちっちゃいころからこれ得意なんだよ?なんかね、気配感じるの。』

「は?四つ葉のか?」



トシは胸の上にそっと四つ葉を置いて・・・・また目を閉じちゃった。

信じてないな?




『じゃぁねぇ・・・もう1個見つけてあげる。』




トシの隣を段々離れて私は四つ葉探しに熱中する。

春の草の匂いが心地いい。


でもなんかこの辺りにはない気がして、私はまたトシの隣らへんに戻った。



目は瞑ってるけど多分寝てないトシ。

私の気配が戻ってきたことに

そのまま微妙に片眉だけ動かしてピク・・・と反応してくれる。

それだけで私は嬉しくなれる。


だって、その機微(きび)を見逃さずにいられる距離に・・・・私たちいるってことだよね。



でもまだまだ、・・・・・もっともっと近付きたい。





2人並んで座る青草の上。




「安寿、そのカッコ寒くねぇか?」

『ん?大丈夫だよ。』




まだ春になったばかりの川の風。



一緒に目を閉じると春のそよ風にさえもカラダがユラユラ和んじゃいそう。

それと…その風に乗って来てるみたいに

今、確かに感じるお互いのあったかいキモチ。





私たちは、こうしてお互いのすぐ近くの幸せの気配を探って

いつまでも仲良くいたいな。






そっと同じタイミングで目を開けていて

探り当てたその互いの気配にふと見詰めあう視線…




『幸せだね。』

「そうだな。」






それ以上言葉を失うほど微睡(まどろ)んじゃって


トシもわたしも





どちらからともなくはにかんだ。





〜しあわせさがし〜。*°・*°♪

fin.



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