御本(中編)*クレナイメモリー*
□memory*01〔感傷と夕立〕
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独り善がりがサマになっちまう年頃。
つまり、一世一代と思ってる片想いが“青春”の二文字で片付けられちまう年頃だ。
そりゃよ。アタマん中は、馬鹿で欲まみれで、浮かれちまったり、沈んじまったり…毎日、毎日繰り返して
はっきり言って、煩悩の数なんか108つで納まってる気がしねぇ。
けどよ、俺のは…全部おんなじトコに向いてんだからマシじゃねぇの?
あ?重い?……ウッセェ。“その辺のヤロー”とは違ぇんだから…いいじゃねぇか。
なぁ……こっち見ろよ。
そろそろ独り善がりも卒業してぇんだけど。俺。
「お前…、土方と別れたんだってな?遊ばれたのか?」
『…そんなわけないよ。別れたのは本当だけど…なんていうか…すれ違い?』
独りぼっちなんかになって、放課後の教室に居た季紅をもう少しここに引き留めることにした。
(“そんなわけねぇ”か…。だと思ったわ(苦笑)確実に俺より硬派いってんもんな。土方クン。)
「あー、よくある擦れ違いな…って、何だソレ(苦笑)お前ら、芸能人だったの?」
教室に入って、適当に、誰のだかわかんねぇ椅子を引っ張って、教室の後ろのドアの前を陣取った。
こうすりゃ前から出てっても、こっち側しか階段ねぇから引き返してくっから…逃がさねぇじゃん。
『行き先が…向いてる先が違過ぎたんだよ。私はさ…トシとここで幸せになりたかったんだけど…トシは違うとこに幸せ持って行きたいって。…私、付いてく勇気なくて(苦笑)』
“ここ”ってこの街のことか?
はぁー…。お前らって夏の間どんなストイックな恋愛してたの?まだ俺ら高2だぞ?
まあ、もう折り返しきてっけど。
「あ、そう。そりゃ…越えられなかったんなら仕方ねぇな。んで?…お前、進路どうすんだ?…第一志望の“土方くんの可愛いお嫁さん”、なれそうにねぇんだろ?」
ストレート過ぎっかもしんねぇけど…悪ィな。もう俺、遠慮すっきねぇから。
『っ!…ね、ぇ…も、もしかして坂田くん、私にその…き、…気がっ…』
焦んなら聞かなきゃいいのに、なんて顔してんだよ(苦笑)