御本(中編)*クレナイメモリー*
□memory*03〔センチメンタルスウィートタイム〕
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「いや、そりゃやべーだろ」
『でも…大丈夫だよ?だって坂田君、今外なんでしょ?もう雨止んでるんだったら私届けるよ。桂君家なら、その駅いつも乗り換えてるとこだし、定期内だもん』
何となく話してた流れで季紅ん家の最寄り駅を聞き出したら
こんな感じに展開しちまって
「いや、明日の朝でいいって。ちゃんと行くから」
『でも…私本当にモーニングコールでき…』
「しねぇでいいって言ったでしょーが!…危ねぇから。女の子が夜出歩くの、お父さん反対ですっ!」
『お、お父さん?!…プッ…坂田君、やっぱオモシロイね?』
ケータイの向こうから季紅が吹き出して笑った息が俺を簡単に喜ばせた。
うわ。俺、これただのヘンタイじゃね?
「“やっぱ”ってなんですかー?まさか季紅サン。お前、俺のこと2年間ずっとオモシロイ奴って位置づけにしてたとかねぇーよな?だとしたら俺マジで…」
まだコンビニの前で通話中。
高杉が店ん中から口パクで“去れ”と訴えてくる。
は?あいつ珍しくふざけてんじゃねぇの?邪魔しねぇでくんね?
今時、電話はアプリで幾らでも無料でかけ放題、話し放題、イチャつき放題…俺たちの恋は永久に続かせられんだっつーの。
『さ、坂田君?ご、ごめんね?!2年間ずっとなんて…そんなことないよ?』
ちょっとの間が不安にさせたみてーで焦り声を貰っちまった。
「あー…お前、今地雷踏んだよな。ハイ、自爆ー。“なんて”ってなんですかー?俺はお前ん中でどんくらいの間オモシロイ奴でインプットされちまってたんですかねー。」
『え…あ、えっと』
「うわ。ゴメンナサイ。ヤメテクダサイ。マジレス言ってくれようとしなくてイイデスカラ。俺、現実直視すんのすんげーキライなんだわ。もうすぐセブンティーンの純白ピュアボーイだから、突きつけられたらガラスのハート砕けマース。」
『ご、ごめんね…』
「…ウン。…もっかい言ってクダサイ」
『え?』
そろそろあんまんが袋ん中で蒸れてしわしわになってくる頃か。
俺の…あのスイッチも調子ついて疼きだす頃。
「…もういっかい謝ってくれ」
『?え、えっと…坂田君?』
「ナニ?……なぁ、もっかい言って」
しょうもないスイッチがもう入っちまってる。
コンビニのガラスに映ってる俺の目が…イヤラシク座っちまってるもんな。
高杉なんか…やっぱな。こっち見て呆れてやがるわ。
『坂田君、どうしたの?』
「ん?いや別にどーもしてねぇって。」
『でも…なんか』
電話の向こうじゃ完全に季紅が動揺してる。
わかっちまう。…その顔が想像できちまう。
そりゃそーだろ。…DK(ダンシコウコウセイ)の片恋約2年分のスキルなめんなっつーの。
「“なんか”が何デスカ?どーかしたか?…言ってみ?」
『…っ、さ、坂田君もしかして私のこと…からかって、る?』
なんでそんな不安気な語尾にすんだ?
ショックとかしてくれんの?
っ!そっちこそ俺を…