御本(長編)*宵待ち*

□三話《香屋と好々爺と》
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あれから一週間が経った

安寿も真選組の隊士達もすっかり馴染んで
落ち着いている

安寿の実家の方からはまだ何も連絡はないが
もうすでに安寿の母と土方が口裏合わせをした事は聞かされている

心配なのは相手側の反応だったが
未だ連絡がない辺り 前向きに考えて
何とかなったのだと安寿は考えている

便りがないのは何とやら…で
安寿の母はそーゆう人なのだ

「お前の母親、随分気風のいい女将だな」
『土方さん‥』

いつからそこに居たのか
安寿は今日は珍しく少し呆けていた
今も池の前の縁側で鯉などを見て
時を過ごしていたのだ

そこに音もなく土方が寄ってきた

「顔は似てたがあまりお前の母親らしい感じはなかったな(苦笑)」
『クス‥驚きましたか?』

「あぁ。お前、性格は父親似か?」
『?どうでしょう…そうなのかもしれません。妹が母の性格によく似ていますから』

土方が珍しく安寿の横に腰を落ちつけた
まだ昼過ぎで勤務中のはずだのに

その証拠にきっちり隊服を着ている

「たまには休憩も必要だからな」
『そうですよね』

土方が煙草に火を着けた

『そーいえば、』
「あ?」
『母からお香預かってきて下さって有難うございました』
「おう。確かもうあんま入ってねぇって言ってたが・・どうすんだ?」
『時々使って‥もし無くなったら我慢します』
「頼まねぇのか?」
『頼めば買ってきてくれるでしょうけど…もうこれ以上我が侭は…。厚かましいでしょ?』

「どうだろな‥。親子ってそーゆうもんか…。」

土方は遠くを見てるようだ
安寿はもうこの話をやめることにした

「‥あれからまだ連絡はねーが心配ないだろ。便りがないのは‥」
『無事の証‥ですか?私もそう思ってます』
「そうか。」

土方はふー…っと煙を吐いてその後…
安寿にはその後…
土方が少しだけ微笑んだように見えた

「…山崎の調査じゃ奴はまだ吉原に通ってるらしい」
『…そうですか。』

安寿にはそれについてはそれ以上返す言葉がない
だが、少し素っ気なさ過ぎたかと後悔する

何か話題を‥


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