御本(長編)*宵待ち*

□四話《燻し、銀》
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香屋の香松を後にして
車は最初の約束通り
大江戸マートに着いた

『本当に有難うございました。』
「それ置いてけ。荷物んなるだろ。後で屯所戻ったら夕飯の後にでもお前んとこに持っててやる」
『でも…』
「…忘れたりしねーから。信用しろよ」


土方さんが少し呆れた顔をしている


『!別に‥土方さんの事はちゃんと信用してます。そうじゃなくて‥』

「じゃぁなんだ?」


土方に不服そうな顔を向けられた


『…大丈夫です。あまり‥その‥私に構わないでいいですから。』



そう言いながら隣で俯いてしまった安寿。
すっかりか弱い気を出している

「別に‥お前を甘やかしてるわけじゃねーだろ。こんぐらいの他人の厚意は素直に受け取っとけ。」


見透かされたようだ

まるで“甘えられない自分”を肯定するように私は黙ってしまっている

「オイ、安寿…」



ドキッ…!!

まただ

またその迂闊な彼の行為が
どうしてか私の心臓を落ちつかなくさせる

思考が狂う

『わ‥わかりました。‥お願いします』
「あぁ。」



安寿はおずおずと土方に香の紙袋を渡した


『それじゃ…えっとまた屯所で。』
「あぁ。」

『見廻り、お気をつけて下さいね。行ってらっしゃい。』

「!‥オウ。」

その時、一瞬だけ、私には土方さんが目を見開いて驚いたような表情をしたように見えた

『土方さん?』
「いや‥何でもねぇ。じゃぁな。」

だけどそのまま視線も合うことなく

あっという間にパトカーはまた街の中に去って行ってしまった



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