御本(長編)*宵待ち*
□五話《鬼灯(ほおずき)》
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あいつと別れて、見廻りをいつものように変わりなくやっていた
・・・はずだったが、
「・・・今日は少し早かったな。」
まだ夕暮れ前だ
いつもなら日の入りを知らぬ間に見過ごして帰るようなのだが
なぜか今日は早く済んでいる
それとも日が延びたのか?
帰路を走る車中で我ながら間の抜けたどーでもいい考え事だと阿呆くさくなる
時間みりゃわかるじゃねーかυ
早く終わったなら、たまにゃ素直に“ラッキーだな”ぐらい思えりゃいいのに
自分の培ってきた性格がいつでも邪魔になる
けど、こればっかりは仕方ねぇ。どうしよーもならねぇ。
・・・俺は一生仕事にゃ手を抜けねぇし、抜く気がねぇからな。
てめぇで決めたことを咎めようがねぇよ。
窓を開けた。
慣例でドアポケットに入れた煙草の箱を片手で開ける。
「今日はあんま減んねぇな・・」
中は見ずとも箱の重さでいつもより2、3本浮いてる気がした
原因の思い当たりはある。
アイツの所為か、おかげか・・・
ラッキーだと思った方がいいのかもな。
信号で止まると銜えた煙草に自前のマヨライターで火を付けた
まだ薄明るい街に向かって窓から煙を吐き出す。
まだ信号が変わらない。
「長ぇな・・あ?」
ゴチてふと見遣った歩道に見慣れた姿がいた
「オイ。」