御本(長編)*宵待ち*

□十話《通りゃんせ》
1ページ/3ページ


これでも、俺はまだ調子に乗ってるつもりはねぇぞ?



コイツを連れ出しちまった。

別にこれは後悔してるんじゃねぇ。

違ぇよ。


これは・・・・戸惑いだ。


自分(てめぇ)でやらかしといて、意味がわからねぇ。


今、目の前に安寿が居る。



夜中だっつーのに割りと顔がはっきりわかるのは、そもそも俺とコイツの今の距離が近ぇってのと

お前の色白の肌に月光がよく当たっているからだろ。

寒みぃから空気も澄んでよくそれが届きやがる。


俺が影にしちまわなくてよかったな。


にしても・・・・




(お前も・・・戸惑った表情してるな)





そりゃそうだろ。

何が「許すぞ」だ。どの口が言ってやがる。



自分でもわかっちまうような、この気持ち悪ィ口元の不敵な笑いは誤魔化しのつもりか?




俺は一体、どうしてぇーんだろうな。お前を。



否、俺とお前を・・・・・。


つーか、早く何か喋れよ。

じゃねぇと俺は、




「動かねぇぞ?言わねぇと。」

『ぴく・・・・!』





あー・・・・前言撤回だ。

こりゃ確実に・・・・・調子に乗っちまってるな。俺ぁ。





自分の口がキモチワリィ。

もういっぺんヤニ入れて整えるか?




「・・・・フーッ」

『え・・・・』




結局、珍しく・・・コイツの方に煙吐いちまった。

気取ったわけじゃねぇ。









ただ・・・・

遣り切れねぇ・・・・。


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ