御本(長編)*宵待ち*
□十八話《鬼の使者の所存》
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行くつもりだった。本当に。…本当だよ?
行って、あっちで任務に専念しながらちゃんと副長を待つつもりだったよ?
でも、気が変わったんだ。
仕方ないじゃないか。
だって…見かけちゃったんだ。
正にオレが副長と別れてその足で向かった門のところで…彼女が…安寿さんが何処かに行くところ。
朝靄の街に消えそうな後ろ姿を。
だから思わず…入りかけてた監察モードも手伝って尾行しちゃって…
彼女がちゃんと屯所に帰って来るかなって疑心暗鬼で…。
銭湯に入ったのを確認したよ。
こんな所、今彼女が来るなんて…ヤダけど理由は解り過ぎてる。
待った。
だってもし、このまま本当にこの街の何処かに消えてくつもりなら…
今、彼女を捕まえて引き留めることができるのは…ここにいるオレだけじゃないか。
正直、任務なんかより使命感が湧いちゃってたかも。
悪いけど、このまま彼女を行かせてあげるって選択肢はオレはないから。
別に“オレの為にも”なんて殊勝なこと勿論思ってないけど、
ふたりはこれから…ずっと一緒に居て欲しい。
居なくちゃダメだって…オレはわかっちゃってるんだから。
でも… 出てきた彼女は…