昔の

□人肌
1ページ/1ページ

好きだとか愛してるとか


そんな言葉は一度ももらったことはない


ただなんとなく


抱きしめられたから抱き返した


そこから始まった





思いが詰まっているのか詰まっていないのか分からない、この関係








お互いにズルいよね
あたしは絶対にあなたのものにはなれない
あなたはあたしを欲しいとは言わない




あたしを独占してほしいという思いがないわけじゃない

欲しがったのは初めての時だけね




あの夜
突然抱きしめられた
驚いたけれど、人の温かさと聞こえてくる鼓動が心地よかった


そのせいか、抵抗する気がおきなくて




背中に回された腕に力がこもったとき
あたしはキスをされていた


次第に深くなるキスに
イヤでも感情は昂ぶっていく





「なんで抵抗しないんだよ」
自分からしておいて怒ったように聞いてきた彼





「…ごめん。あたし、自分からは止められない…」





「なんで」






「なんでって…必要とされてるようで嬉しいから…?」






「…なんだよ、それ。頭、おかしいんじゃねぇの?」







「そうなのかな?わかんないな」
そう言って、あたしは彼の背中に腕を回して抱き返し、胸に顔を寄せた。「だって、こうするのは気持ちいいよ。あったかいし…。

ねぇ、必要としてくれるの?…」
彼を見上げる










「…ホントにあんたバカなんじゃねぇの…」
乱暴な言い方なのに、それと違った表情の彼の顔が近づいた
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ