Knife*

□大人達の余裕 昌×博
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「ちょっと坂本君しんどそうだね。大丈夫?」

今度の新曲のPV撮影。俺は昨日深夜まで取材やら撮影やらで
今日の朝のこの仕事が結構きつかった。
でも、6人が揃うこともなかなかタイミング的にないし、
絶対に済ませないと迷惑のかかることだってことも分かってたから
俺はとにかく必死だった。それにしても
爽快な笑顔でそんなこと言う博には本当尊敬する。

『博、お前が元気すぎるんだろ。
さすが、食事中に腹筋するだけあるな(笑)』

ちょっと嫌味に言ったのにニコニコする博。気にしてないのか?
理解してないのか?それにしてもしんどい・・・。

「あのさ、今日ヒマ?」

『え?うん。まぁヒマだけど?なんかあるの?』

「さっきさココ来る前に美味しそうなお店見つけてさぁ〜」

なるほどね、それで笑ってるわけね。
一体なんなんだよ。食いもののことばっかりじゃねぇかよ。


撮影も順調に終わり、すっかり夕方になっていた。
俺と博は一緒に食事に出かける。
とぼとぼ二人で歩いているけど、博はスマホをずっといじっている。
しかもなんか困ってるような表情だった。

『なんか、予定でも入ったんじゃないの?』

「いや、大丈夫だと思うよ。」

『え?誰から連絡来てたの?大丈夫なの?』

「いのっちからだよ。ご飯食べようよって。」

『え?誘わなかったの?』

「・・・。うん。」

しばらく沈黙が続く。博はなんだかもっと曇った顔をしている。
俺は焦って何もないのに、必死に笑って、まぁいっか〜とか言いながら
また歩き出した。なんとなくだけど、博は井ノ原のこと
苦手なのかな?とか思った。

そういうことはあんまり聞かない方が良いだろうし、
聞いても俺にはどうしようもないことなんだろうし・・・。

「あ、ここだよ!」

『・・・お!おぉ!いい感じの店じゃん!』

大人っぽいイタリアンレストランで、薄暗い店内にキャンドルや
水槽がより一層ロマンチックな感じ。
というかこういうところはカップルでくるもんじゃないのか?
と頭によぎったけど、せっかく来たんだしと
何も言わないで店に入った。

店員さんが出迎えてきて、博の顔をみた。
そして少しハッと目を見開いて
「お待ちしておりました」とお辞儀をして奥へ案内する。
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