Knife*
□砕けた甘い蜜 井×准
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「元気ないねどうしたの?」
准一は他のメンバーも集まる楽屋で小さな声でそう囁いた。
俺は、俯いて顔を腕でかくして机に伏せて寝ていた。
ゆっくりと顔をあげて准一の方を見る。
『・・・うん、まぁ。最近家に帰るのが憂鬱なんだよ、ハハハ…』
俺はそういうと目の前の鏡を見た。腕と顔が密着してたところが
真っ赤になっていた。目はもっと重たく細くなっていて
力もなく、ぐったりしている。
「へぇ、そうなんだ。そりゃ辛いこともあるよ。でも頑張らなきゃね。」
准一は俺の肩をポンッと叩いてそう言った。
俺は数回精いっぱいの笑顔で頷いた。
今日の仕事は音楽番組の収録だった。
新曲をテレビで披露するために、久々に6人で集まっていた。
けれど、みんなこの後のスケジュールがあるのに、
俺は何度も何度もダンスの部分でミスをしてしまっていた。
みんなは黙っているけど、ヒシヒシとイライラが伝わってくる。
『ご、ごめん。俺ばっかりミスしてさ。』
そういうとみんなは無言で数回頷くだけ。俺は俯くしかなかった。
すると、
「イノッチ、大丈夫だよ。次はうまくいくって!」
と普段無口な准一がそう励ましてくれた。
俺は嬉しくて、泣きそうになった。
『おぉ!わかった、次こそ頑張るから。』
その声に准一もニコッと笑ってくれた。
本来の予定時間より1時間も遅れて収録が終わった。
俺がカメラマンさんやディレクターさんに謝って
楽屋に戻ったころには楽屋は静まり返ってて、俺一人だけだった。