Knife*

□錆びついた鋏 准×剛
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「・・・ねぇ、寒い中待たせてごめんね。」

夜の繁華街、若い子たちの甲高い声と、
サラリーマンの疲れきった行進混じるここで、
俺と剛君は待ち合わせをしていた。

空は曇っていて、明日は雨の予報だった。

剛君はカーキのロングジャケットにブラウンのマフラー
マスクをしていて、こっちを相変わらず
怖い目で見ている。

ポケットに両手を突っ込んで猫背で俺を見て、
数回頷いて、俺の姿を靴の先から黒のニット帽の先まで
まじまじと見つめているけど、まだ無言で
俺の声を待っているようだった。

「ちょっと混んでてね。どうしても間に合わなかった。」

そういうと、黙ってあたりを見渡す。

『ん、あっそ。』

「・・・うん。怒ってる?」

『・・・早く寒いからどっか連れてけよ。』

「う、うん。」


俺は慌てて近くのタクシーを捕まえる。
俺は剛君の背中を押して、それに乗り込む。

タクシーの運転手はこちらを振り返り目的地を求めてきた。


剛君は俺の顔を見て、首を傾げている。


『早く、目的地言えよ。』

「・・・えっと・・・。」



俺も剛君を見つめて黙り込んでしまった。


『何やってんだよ、早くしろよ。』

「どこいく??」


剛君は呆れて、ハァ???と困り果てていた。


『んじゃぁあ、運転手さんのオススメの和食屋さんで。』



運転手は少し悩んで、車を発進した。
その時、剛君は俺をみて、また怖い目でにらんできた。
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