Knife*

□嘘だとしても 剛×昌
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そう言うと、昌君は俺の隣に寝転んでまた抱きしめてくれる。
俺はこの時がいつも大好き。
だって石鹸のいい匂いがふわふわ漂って癒されるから。
それに、大好きな人とこんなふうに
静かに抱き合っている時間ほど幸せなことはないでしょ。

そして、この時の昌君はいつも優しさに溢れてて、
俺がどんだけ長い間抱きしめてても
文句も言わないでずっとそれに応えてくれる。

しばらくして、俺が抱きしめるのをやめると
昌君は俺をじっと見つめていろんな話をしてくれる。
俺らはなかなか一緒に仕事をすることがないから、昌君の話は
新鮮で、とても面白い、俺はその話で
たくさん笑って、驚いて、楽しんで、そしてだんだん睡魔がやってくる。
俺はいつのまにか、昌君の話を聞いてる途中で良く寝てしまう。
でも、そんなことをしても昌君はちっとも怒らない。

だって、俺のことを一番に分かってくれているから。



朝はいつも、いい匂いで起きる。
ハムというか肉というかそういうのが焼けているような音と匂い。
そして、お湯が沸いてる小さなグツグツという音。
甘い匂いもする。きっとクリームのバニラの匂い。

俺はしばらくしてその匂いにまるで釣り堀のサカナのように
餌に、匂いにつられてやってくる。寝起きのおぼつかない足取りで。
昌君は、俺の顔を見るといつも、どんな時も火を止めて
’おはよう’のハグとキスをしに来てくれる。

俺はこの朝もとても好き。その時の昌君の匂いは、
朝起きて最初に飲んでいるコーヒーの大人な匂い。


「早く、シャワーを浴びてきな。もうすぐ朝食が出来るよ。」

『・・・うん・・・待ってて。』



俺は脱衣所に向かう。
すると、浴槽から暖かい湯気が昇ってる時がある。
そう、昌君が俺の為に浴槽にお湯を張っててくれてて
しかもローズのバスパウダーを入れておいてくれている。

お湯は淡い赤色で、匂いはもちろん甘いバラの匂い。
俺はお湯につかって身体をあたためる。
お湯につかったまま体中をなんとなく触ると、
あの夜の記憶を呼び覚ますように、ヌルッとした体の部分を指が這う。

その時は少しドキッとするし恥ずかしくて
一生懸命指でごしごしヌルヌルを浴槽に溶かしていく。

あの夜をぼけーと思い出すことも俺にとって好きな時間の一つ。
どんだけ苦しくても、いつのまにか快楽に変わっている。
俺はお風呂でもこうやって頭の中をふわふわにさせたりもする。
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