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□覚醒
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C太は無理矢理僕の唇に自らの唇を押し付けてきた。
柔らかなその感触に少し戸惑う。何時も、日常的に目にしている筈のC太の唇が自分の唇に覆い被さっているのは以外と不思議な感覚だった。
その感触に惚けていると、C太は目をゆっくり開け、閉じる事無く僕を見据える。至近距離でそうも直視されるのは少し恥ずかしい。
目のやり場に困った所で、C太は自らの唇をかぱ、と開き、僕の唇をぺろりと舐める。
またもや突然の事に困惑するが、促されるまま、されるがままに僕も唇を開く。
C太の舌が僕の口腔内に侵入してくるのがよく分かった。C太の舌は口腔内を滑るように蹂躙し、歯茎をなぞり、喉の奥まで深く突き刺された。
「……はぁ、ぁ、ひっ…し、C太ぁ……っ」
僕のくぐもった小さな声はただ何事も無く静かな部屋に響くだけ。C太の耳には届いていないように感じた。
しばらくするとC太は唇を離した。C太の唇からはどちらの物かもう分からなくなった唾液が伝っていた。
その唾液を舐め取ると、次は僕の耳に唇を寄せる。微かな悲鳴を上げると、「A弥って耳弱いでしょ」なんて言って笑って見せてくる。耐え切れなくなって顔を逸らすと、C太は耳の中にぐちゅりと舌を捩じ込んできた。
「ひいっ、ちょ、あ、…止め、……駄目だってば、C太…ひっ」
喋りたくも無いのに勝手に喉から声が漏れる。しかも、自分じゃない様な高い声。恥ずかしくて堪らない。
C太は耳の中で舌を抜き差しし、十分に絡ませる。ぐちゅりぐちゅりと卑猥な音が鼓膜に響く。
「……へぇ。やっぱりA弥って感じ易い身体してんだね?てかそんなエロい所いっつも無防備に出してんだ?全く、いけない子だよね」
なんて耳元で囁いてくる。馬鹿か。
…まぁ馬鹿じゃなければこんな事しようとしないだろう。
「触んなって…っ、くっそ…ひっ、」
抵抗虚しく、僕は拘束されているのだったっけ。最悪だ。言葉でこの悪魔を倒す事など不可能だろう。
僕はこれ以上、抵抗でも何でも言葉にしたら声帯が弱まり、変な声が出てしまいそうなので唇を血が滲む位噛み締める。
「……ね、A弥。オレの事、好き?」
C太は微かに心配そうな声色で呟く。
耳から顔を離した様な気配がした。僕はゆっくりと顔を向けると、C太は下を向いていて、表情までは読み取る事は叶わなかった。
「………C太?」
「A弥は」
僕が彼の名を言うと同時に彼も僕の名を口にする。大分C太の声の方が大きかったので、僕の声は掻き消される形となった。
「A弥は、オレがどんな人間でも、好きで居てくれるの?」
……ちょっと待て。僕に何故そんな事を聞くのだ?全く意味不明だ。
思考、分析回路もようやく回転し初めた所で、C太は完全に油断仕切っていた僕の両肩をベッドに思い切り押さえ付けた。
「ねぇ!A弥?オレの事好きだろ!?好きなんだったらっ、……」
突然の大声にびっくりする。正直、C太に恐怖感さえ抱いた。その褐緑の双眼は完全に冷め切っていて、まるで遥か遠くの物を見ているかのような、僕なんて眼中に入っていないかのような感じがした。C太がこんなに怒りだか何だかをあからさまに表したのは初めての事だったように思う。
「……オレの言う通りにして?」
C太は低く囁いた。
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