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□独裁
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だけど。
その見栄は何時まで続くのかな?
「…酷いなぁ、A弥は」
拗ねた様な口調で言うと、右手をA弥の太腿から放し、シャツの上から左胸に強く掌を押し宛てる。小さく、怯えた様な悲鳴を上げるが関係無い。右手の掌にじんわりとA弥の体温が感じられ、心臓が脈打っているのが直に伝わってきた。その鼓動はとてつもなく早くて、激しくて確かに、生きている。その皮膚組織の奥深くに有る小さな塊は、壊れてしまいそうな位高鳴り、快感を主張していた。
思わずふっ、と笑いが漏れる。
それは別に嘲笑とか、馬鹿にした冷笑ではなくただ単に“可愛い”と思っただけ。
ただ、A弥の目には歪笑に映っただろうけど。
「A弥、こんなに心臓ドキドキしてるくせに……、っ」
「あ゙ッ!?ひっ、い、ぅ…くっ…、あ、あ、はいっ、…てき…ッ」
少しずつゆっくりと右手に体重を移動させ、行為を押し進めていく。A弥の身体は面白い位敏感に反応し、オレの欲を更に限界まで追い込んでいく。
A弥は非常に流されやすいタイプであり、感情も感度も分かり易い。虐め甲斐が有るってこういう事なんだなぁ、って改めて思う。
A弥のシーツを握り締める手が見るからに強みを増した。表情も明らかに痛みに必死に耐えている様に、苦痛に歪んでいた。ぎゅっ、と固く閉じられた目からは絶えず涙が溢れ出ている。声も出ない様に耐えている様だった。至近距離でそんな顔を見せられたら、誰だって加虐心が掻き立てられるのは間違い無いだろう。
もっと泣かせてみたい。もっと哭かせてみたい。もっと啼かせてみたい。
誰に何と言われようと関係無いのだ。
ね?だって、A弥はオレの所有物なんだから。
何をしようとオレの勝手。
文句こそ言われたら、それこそ心外ってやつだ。
A弥はそろそろ恥ずかしくなってきたのか、真っ赤な顔を横に逸らし、腕で目を塞いだ。腕の隙間からは悔しそうに、血が出てしまいそうな位きつく唇を噛んでいるのが見えた。
荒い呼吸からは声を堪えている事が窺えた。それが、可愛くて可愛くて。ついつい、意地悪をしてしまうのだ。
「はっ、……A弥、声、我慢すんなって…。力抜いて?」
そう優しく声を掛けると、A弥はびくりと反応した。だが腕は一向に退けようとしない。
…何でこう、素直じゃないんだ。
オレはどうしようもない苛立ちを感じ、胸に押し宛てたままだった右手を素早く離して、A弥の顎を下から乱暴に掴んで強制的にこちらを向かせる。
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