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□追想
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もう、何年経ったろう。
あの、みんなで笑い合った日々から。
私にはそんな時間が経った風には感じなくて、まるで、昨日の事の様に感じられる。
メデューサの寿命は、人間とは比になら無い位長いんだって。
昔はそんな事気にしていなかったし、何とも思っていなかった。
“普通の人間より少し位寿命が長くたって、ただそれだけの事。”
その“少し位”が、どんなに長い年月か知りもしなかった。
みんな居なくなって、分かった。
みんな歳を取るのに、私は当時と何一つ変わらない。
みんな、成長していくのに、私は……。
変わっていない。
変われない。
最初から出会わなければ良かった。
……と思った事も有った。
けど、みんなの笑顔を見ると、そんな事考える自分が馬鹿みたいで、酷く自分が嫌になった。
今は、誰も居ない。
毎回、誰かのお葬式に出る度に悔やんだ。“何で私は普通じゃないの?”“どうして私はみんなと同じ様に時が流れないの?”って。
いくら悔やんだって、いくら憎んだって、いくら悩んだって。助けてなんて。言えなかった。
セトが初めて私の家を訪ねて来た時の事を不意に思い出す。
『世界はさ、案外怯えなくて良いんだよ!』
今の私には、もう怖い事だらけだよ。助けてくれる人なんて誰も居ない世界の、何を信じて生きていけば良いの?
“仲間が出来た”なんて一時的な物だった。
どうして?
どうしてそんな風に思えるの?
「ははっ、……ほら。また分からなくなる」
ぽたぽたと手に雫が落ちる。
セト。
貴方の笑顔が忘れられない。
放浪癖は最終的に直らなかったね。
最後までみんなの為に寝る間も惜しんで掛け持ちの仕事をしてくれたよね。
何時まで経っても優しくしてくれたよね。
いつもいつも……。
私はおんぶに抱っこで。
セトの事は何一つ知らなかった。
知ろうとしていなかった。
ごめんね。
こんな、手間の掛かる子で。
こんな、我が儘で。
こんな、弱虫で。
ごめんね。ごめんね。ごめんね。
一緒に、死ねなくて。
「うっ、せと……っ、ごめんね……っっ、いつも迷惑かけてっ…!うっ、うっ、私っ、私ねっ……、造花、1日で20本も作れるように、っ、なったんだよ……っ、あっ、…あとねっ…っ…」
私はセトの石碑に向かって泣き続けた。
一体何回目だろう。
あの日々を思い出すのは。
一体何回目だろう。
みんなの事を思い出すのは。
一体何回目だろう。
貴方の事を思い出すのは。
結局私は、みんなと出会った時から何一つ変わっていない。
私はこれからも、こうして貴方の石碑の前で泣き続けるだろう。
涙が枯れるまで。
涙が嗄れるまで。
涙が渇れるまで。
涙が、石碑に染み込んで、貴方の元へ届くまで。
私の声が、貴方に届くまで。

『……ごめんね……』


何度でも。

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