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□好意と行為
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“ねぇ、ちょっと聞いた!?昨日、王子が怪我しちゃったって話!!”
“あっ!!聞いた聞いた!可哀想だよね…。骨折なんだって?”

朝、クラスに来るなり女子共がみんな噂話をしていて、突然耳に飛び込んで来た。
俺は自分の席に座る。女子の話は真後ろで行われている。
王子、というのは霙太のあだ名の様なもので、骨折と言うのだから聞かない訳にはいかない。が。正直半信半疑に俺はその会話に耳を傾けた。
“えー!?マジ!?王子骨折って、ピアノ出来ないじゃん!”
“うん…。でも完治したらまた弾けるじゃん!九死に一生だよねー”
“は!?何言ってんの!?王子の左手、もう一生動かなくなっちゃったんだってば!聞いてないの?”
……は?
動かない?
だって、……だって、アイツは
“えっ、動かないってどういう事…?”
“ピアノの練習中に鍵盤の蓋が倒れちゃったんだって。王子の両手、下敷きになっちゃったみたいだけど、右手は何とか大丈夫だったみたい。”
俺は頭が真っ白になった。
何だよ、それ。
しかも、お前等は知らないから“右手は何とか”なんてそんな事言えるんだよ。
霙太の利き手は左手。左利きなのだ。
しかも、普通なら考えられない怪我。鍵盤の蓋など、滅多に倒れない。そんなダセェ失敗、アイツがする訳……。
……もしかして。

気付いたら俺はチャイム直前の廊下を全速力で走り抜けていた。
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