旧拍手

□トキヤと私と今日の夕飯
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『お腹空いたなぁ……』

夕方、私は夕飯を作るのがめんどくさくて近くのスーパーに来ていた。

『うわ…おいしそ…』

おかずのコーナーにおいてあったコロッケを手に取り、カゴに入れる。

『あ、これも』

その近くにあったエビシュウマイ、そして唐揚げも迷うことなくカゴへ。

『あとは』

キョロキョロと周りを見ると、美味しそうな物ばかりが並んでる。

あれも、それからこれも……

食べたい物を迷うことなく次々にカゴへと放り込む。

満足した所でレジに向かおうとすると、後ろに……

『きゃあ!と、トキヤ?』

私の持つカゴの中をみて眉をひそめるトキヤが立っていた。

「なんです、そのカゴの中は」

怪訝な顔でそう言うトキヤ。

『え、えーっと、今日の夕飯……』

目を逸らしながらなるべく小さな声でそう言う。

「なっ⁉カロリーの高い物ばかり……いや、カロリーの高い物しかないじゃないですか!」

驚愕するトキヤに、私は苦笑いする。

「はぁ、あなたはいつもそんな物ばかり……よく太りませんね」

呆れたように言うトキヤ。

『まぁ私。太りにくいからね』

「羨ましい限りです」

会話が終わったのでそそくさとレジに向かう。

「どこへ行くんです?」

が、トキヤに見つかった。

『どこって……これ買わなきゃ』

「本当に食べるんですか……」

『勿論』

食べないなんて勿体無いじゃないか。

私が真顔で返答すると、トキヤがため息をつく。

「………君はこれから何か用事などはありませんか?」

『へ?ないけど?』

いきなりトキヤが変な事を聞くので驚いた。

だって……関係なくない?

「では、私が夕食を作って差し上げます。それを返してきなさい」

そして、トキヤの言葉は予想外のものだった。

『え⁉い、いいの?トキヤの手作りのご飯なんて……!』

そりゃ、買うより作って貰った方が金銭的にも味的にも嬉しい。

「それらの物を全て返してきたら……ですよ?」

しかもそれだけで作ってくれるなんて……!

『か、返す!返してきますっ!』

「よろしい」







トキヤいわく、私が買おうとしていたものを返す時間は約1分だったらしい。

だが、私は、持っていたカゴの中には大量のおかずが入っていた事を覚えていた。

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