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□始まりの音
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「You、これから一年間、ミーの学校に通ってくだサーイ!」
それは突然の宣告だった。
芸能活動を始めてから約3ヶ月。私は今、社長に呼ばれ、ここにいる。
そしてそこにはリューくんや林檎ちゃんもいた。
なぜ2人がいるのかも未だ不明。
『しゃ、社長?それはどういう事ですか?』
自分で言うのもなんだが、私は結構人気アイドルだ。
バラエティやドラマに雑誌。さまざまな仕事で大活躍している。と言っても過言じゃないと思う。
そして社長の学校と言えば、倍率200倍というアイドルと作曲家の育成学校だ。いわゆる、アイドルと作曲家を目指す人達が通う学校なのだ。
しかし、現役アイドルの私がなぜこの学校に通わなくてはならないのだろう?
歌だって、ダンスだって、他と劣ってるとは思わない。
そんな私に、この学校で学ぶ事などあるのだろうか?
私が考えこんでいると、リューくんが私に問う。
「お前、確か中学2年の時に家が没落したんだよな?」
それは、私の家の話だった。
家出して3ヶ月。正直忘れたい記憶だ。
「ちょっ!龍也!」
その「没落」という言葉がまずいと思ったのか、林檎ちゃんがリューくんを注意する。
もう、そんなに気にしなくてもいいのに……
私は別に家の事なんてもう関係ない。
だって、今の生活……
アイドルの仕事がとても楽しいから。
『いいよ、林檎ちゃん気にしてない。…うん、そうだよ。』
心配そうに私を見る林檎ちゃんにそう伝えてリューくんの質問に答える。
するとリューくんは、「悪かった」というような顔をして言葉を続けた。
「お前、中学も約1年しか通ってないし、学生生活してねぇだろ?だから、社長が早乙女学園でお前に学校生活を楽しんでもらおうと企画したんだ。」
社長……が?
はっきり言って今までリューくんを困らせる事ばかりしていた社長が。こんな……!
社長の方を見ると、社長と目が合った。そして、社長はそのまま二カッと笑った。
どうしよう……すっごく嬉しい。
だってこの事務所に入って間もない私のために、こんな企画を考えてくれてたんだよ?
『あっ!ありがとうございますっ!』
私は深く頭を下げ、大きな声でお礼を言った。
「ハッハッハーYouはこの事務所の看板アイドルデース!いつも頑張ってくれてるYouにィこれはご褒美ナノナノ」
椅子の上に仁王立ちする社長。
と、とりあえず、褒められてるって事で良いのかな……?
『こ、これからも頑張ります!』
私が戸惑いながらそう告げると、社長は深く頷いた。
「入学式は明日デース、必要な物は全て学園内の寮に置いておきマシター」
当たり前のような顔で社長が告げる。
用意してくれたのはほんとーっに嬉しいけど……
『え?寮?』
寮ってどーゆー事だ?
私が首を傾げると、林檎ちゃんが簡単に説明してくれた。
「早乙女学園は、全寮制なのよん」
あ、そういえば聞いたことあったような……
頭の中で回想する。
てか、それじゃあ私、今日から寮生活?
『あの、社長。私は今日から寮生活をするということですか?』
だって、制服とか明日着ないといけないしね。
「その通りデース!Youはこの地図を持って、これから部屋に向かってもらいマース!」
パンフレットのような物を渡された私は、それを開いてみる。
あ、この丸してある部屋だな……
『分かりました、じゃあ失礼しますね。』
「あ!ユウちゃん!私も今日はもう仕事ないから、一緒に行きましょ?」
部屋から出ようとした所で、林檎ちゃんから声をかけられる。
「ノンノン、林檎さんはぁ、少しの間龍也さんとここに残っていてくだサーイ!」
林檎ちゃんに『良いよ』と返事をする前に、社長が林檎ちゃんを止めた。
「え?ハーイ。それじゃあユウちゃん、あとでね!」
ブンブンと手を振っている林檎ちゃんに向けて、てを少し挙げる。
『うん、分かった。』
社長達が残って何を話すのか少し興味があったが、社長の命令なので、すぐに寮へと向かった。