「ボンゴレ、起きてます?」
夜中に目覚めた。悪夢を見たわけでもなく、かといって喉が渇いてたわけでもなく、ただなんとなく目覚めた。時計の針は二時半を指していた。
なんとなく暇になった骸はドン・ボンゴレの執務室へと出向いた。
しかし、いくらノックをしてもドン・ボンゴレは返事を返さないために無断で木で作られた扉を開く。
「あ、骸じゃん」
机にもソファにもいない綱吉をキョロキョロ探していた骸は人の気配がしなかったトイレから出てきた綱吉に驚いた。
「……トイレだったんですか」
「うん。あ、骸。丁度よかった。肩揉んでよ」
肩凝っててさ。と苦笑する綱吉に骸は頷いた。
「ええ、構いませんよ。僕も暇なので」
「ありがとう。じゃあ、お願い」
首を回しながらソファに座る綱吉の後ろに回り、骸は上着を脱いで近くに吊るしてあったハンガーにかけた。
「失礼」
綱吉の両肩を掴んで親指で肩を押すと思った以上に凝っている肩に驚く。
「……マッサージチェアを買ったほうがよろしいのでは?」
そういった骸に綱吉は小さく頷く。
「やっぱり、ほしいよね。でもさ、オレこの歳で買いたくないって意地があってさ」
「そんな意地張ってるから、こんなに凝っちゃうんですよ」
んっ、と小さく呻きながら骸は親指に力を入れる。
「……ん、そこ、超いい。そのままそのまま……」
綱吉の目がトロトロとしてきたことに骸はまったく気づかないぐらいに力を込めて肩を揉む。
「……無理ぃ」
「はい?」
しばらく揉んでいるうちに骸は異変に気づいた。綱吉の頭がフラフラと動く。
「……ちょっと、綱吉くん」
職務中の綱吉の名を呼んでしまい骸は一瞬顔を顰めたが、すぐに無表情になる。
「起きてください。アルコバレーノが煩いですよ」
「……骸がなんとかしてよ」
オレ、もう無理。とかなんとか言いながら本格的に眠りについた綱吉を見て骸は揺さぶる。
「……あ、雲雀だ」
恐らく一番綱吉に効くだろう名前を出すと、目を限界まで見開いて、何事もなかったかのように机に戻る。
骸はそれを見ながら、思わず笑みを浮かべた。
「……骸、嘘ついた?」
「ホントに雲雀が来たらどうするつもりなんですか? 見つかってからでは遅いでしょう?」
「……馬鹿骸。ちょっとは恋人とほのぼのした気分に浸りたかったオレの気持ちを察知しろよ」
ムッとしながら綱吉は骸を睨む。骸は満面の笑みを浮かべると綱吉に近づいた。
「後でほのぼのした気分に浸らせてあげますから、今は仕事をきちんとこなしてください。サボリでほのぼのした気分なんて無理でしょう?」
「……分かった。じゃあ、この仕事終わったら日本行こうね」
「ええ」
黒縁の眼鏡をかけると、綱吉は永遠に終わりそうにない書類に目を通し始める。骸はそんなボスに一礼すると、上着を取って部屋を出た。
――日本に行ったら、ほのぼのなんて友人みたいな雰囲気じゃなくて、もっとピンク色の雰囲気を作ってあげますよ、綱吉君。
骸がそんなことをニヤニヤしながら考えているところを見た雲雀は綱吉のために書類を増やしたのは言うまでもない。
End