掴まれた腕が痛い。ガキのくせに大した力だと思いながら、一気に腕を振り下ろす。子どもの手は呆気なく腕を離れた。
「俺は、ツナを裏切ったなんて思ってないぜ」
前髪にかかる金髪を左手で掻きあげる。そうすることで、目の前にいる少年を見る。
「ツナのためにやったことだし」
「ツナのため?」
山本の目が細くなる。
「うそつき」
ツナの親友は、親友の域を超えている。ツナを誰よりも大事にしたがる。護りたがる。
山本のなかのツナは命を救ってくれた恩人だ。誰よりも大事に思ってくれるツナに心底惚れてるだろう。
だけどな、山本。ツナは皆のことを平等に誰よりも大事に思ってんだ。お前だけのものじゃねぇんだぜ?
「ツナのこと傷つけて、何が楽しいんだよ。意味分かんねぇし」
「あのな、山本。みんな傷ついて大きくなるんだぜ? お前はツナのことをでかくしたくねぇのか?」
一瞬、山本の表情が強張った。でもすぐに無表情になる。
「ツナは傷つかなくても、十分にでけぇし」
「そうだけど、あんまり過保護なのもどうかと思うぜ?」
「過保護でもいいんだよ。ツナさえ無事でいりゃ、それでいいんだから」
ボンゴレとは今後一切関わることがなくなる。今、山本と話してるので最後だろう。
山本の必死さがあまりにも可笑しくて噴出した。
「……なにか可笑しかったですか?」
「いや、別に」
やんわりと否定して首を振る。
まるでボンゴレの傍にまだ居てと言わんばかりの駄々っ子だと思った。その駄々っ子の背景にツナがいることを知って、次は声に出さずに笑った。
End