「つなよしくん」
突然の訪問に驚いたのか骸は棒読みだ。オレは小さく笑って、家に入っていいか訪ねる。骸はこくりと頷くと、家のなかに入っていった。オレも黙ってついていく。
「むくろ」
「はい?」
リビングにある黒いソファに座って早五分が経過した。その五分間ずっと無言だった。
沈黙を破ったのはオレだった。いつもなら目を合わせてくれるのに今日は一回も合わせてくれない。
(怒ってるのかな)
参ったなぁと思いながら一応聞いてみる。
「昨日、誕生日だったよね?」
「君は忘れていたみたいですけど」
決め付けたような言い方に苦笑する。
「携帯、見た?」
おそろいだと言って骸と二人で買った白色の携帯は部屋を見渡す限りどこにもない。
骸は一瞬きょとんとした後、慌てたように寝室に走っていった。そのあと、すぐに戻ってきて頭を下げてきた。
「すいません。充電していたので気づきませんでした」
「ん、いいよいいよ。誤解解けたならそれでよかったし。誕生日おめでと」
ヘラッと綱吉は笑っているが、骸は申し訳なさそうに唇を噛みしめてる。
「……何時間待ってたんですか」
え、と呟いてまずいと思った。
昨日はちょっと奮発してバイトで貯めたお金で個室があるレストランに予約していたのだ。ずっと待ち合わせ場所の公園で待っていた。四時間もだ。
携帯に電話してみても、繋がらなくてがっかりしながら帰った。
それを悟られまいと綱吉は顔に出ないように笑う。
「いや、忙しいだろうから三十分ぐらいで帰ったよ」
「そうですか……。それはよかった」
そういって安心したように骸が笑ったので綱吉も一緒に笑った。