大空の涙







※山本が女性と結婚しているという設定です。山ツナ要素は薄いです。苦手なかたは戻ることをお勧めします。


 
 山本が行方不明になった。もう一年も前からだ。捜索隊も結成せず、そのまま放置していた。みんな諦めていた。山本はもう戻って来ない、と。

 でも、今、目の前にいる。雨の中、ぼんやりと空を仰いでいた。

「……山本」

「……ツナ」

 少し長くなった黒髪が額にへばりついている。髭も伸びていた。

「風邪ひくよ」

 自分で使っていたビニール傘を差し出す。でも、山本がやんわりと首を振ったので仕方なくまた自分で使う。

「一人なのか?」

「うん」

「そっか」

 山本の左手の薬指に指輪が嵌められているのを見て、下唇を噛む。

「山本、1つ聞いていい?」

「いいぜ」

「山本は、どうしてボンゴレを抜けたの?」

 雨が激しくなる。山本は口角を上げて、言った。

「妊娠させちまったんだよ」

「……妊娠? 好意で妊娠させたんじゃないの?」

「好意はなかった」

「……そんな」

 視界が涙によって歪む。泣いていると悟られないから、雨が降っていたことに感謝した。

「そんなの、相手の人が可哀相だよ」

「……ツナがそういうと思って抜けた」

 山本がへなっと力の抜けた笑みを浮かべた。

「俺の人生って、ツナあっての人生だったのな。だから、今はすげぇ後悔してる」

「……でも、もう戻ってくる気はないんでしょ?」

 山本は曖昧に笑みを浮かべて、口を動かす。でも、激しい雨のせいでなんて言っているか分からなくて、首を振った。

End





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