パラレル
□エピローグU 後編
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「ッ……!(しまった!!)」
嬉しそうな声と共に、目の前に越前が飛びかかってきた。
予想もしなかった所からの登場で、桃城は対処に遅れた。
相手が右腕を突き出してきたのを、反射的に掴み、其れを防ぐ。しかし、越前は妖しく笑んだ。
「いいの?片腕だけで。」
(チクショウ!!)
しかし、時既に遅し。
越前の左腕が、桃城の首をつかむ。
「ぐっ……!」
苦しそうに顔をしかめ、圧し殺したような声を出す。
越前は、力強く掴んでいるのではない。桃城の魔力を吸いとっているのだ。
低ランクの{同族喰らい}は、文字通り血肉を貪ることしかできない。
しかし、越前ほどのランク(中の上)になると、自分の意思で、相手の魔力を吸いとって「食事」することが出来るようになる。
そして、まさに今、越前は「食事」をしているのだった。
「……あんまり、美味しくないなぁ……。」
{同族喰らい}しか分からない魔力の味に文句を言いつつ、越前は容赦なく「食事」を続ける。
「ぐぁ………。」
ドサッ 桃城は、身体から力が抜けて、立て膝をついてしまう。高さ的に越前を見上げる形になり、思いっきり睨む。
しかし、越前は嬉しそうに口を歪め、
「まだまだだね。」
とはっきり言った。
(ああ……ヤベェ……。)
だんだん、意識が遠のいていく。身体が言うことを聞かない。
紫水晶の瞳が微笑した――――。
ボーン ボーン ボーン…………
23時30分を知らせる鐘が響く――――。
「30分前になったら、起こせよ。」
海堂とした約束が、何年も前に思えた――――。