空合わせの恋路、2章

□2話.浮かんでは消え
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「(イエローのこと甘く見ていたところもあるけど、それでも…)」

「いいだろう。俺が見てやる。」


私が戸惑っていると、そんなグリーンの言葉が聞こえた。


「え…?」

「オツキミ山の情報が入るまでは俺達も修行しようと思ってたところだしな。ピカをお前にまかせるかどうかはそれからだ。」

「…!はい!」

「イミテ、お前もそれでいいだろ?」

「私は…」



グリーンはリザードンの方に向かって歩き出す。

すれ違いざまに私の頭にポンッと手を置き、私にしか聞こえないぐらいの声で言った。


「いくらアイツのためだと言っても、お前がそんな役にまわるのは似合わないと思うが?」

「!」


グリーンは全部気づいてたんだ。

鋭いなあ、やっぱり。


でも彼の言うとおりで、あんな想いをぶつけられてもなお冷たくあたるなんて無理だ。


「…イエロー。」

「は、はい!」

「やるからには徹底的にやるからね!」


にっこり笑って言えば、イエローもぱあっと花のような笑顔を見せて「はい!」と元気よく返事を返してくれた。


いい子だ!イエロー!!

かわいいかわいい…!


抱きしめたくなる衝動と顔が緩むのを必死におさえていると、グリーンの方から哀れんだものを見るような視線を向けられた。


「…グリーン。失礼なこと考えてるでしょ。視線が冷たい。」

「ああ、悪い。」


そう言ってニヤリと笑みをうかべるグリーン。

明らかにわざとでしょう!そこは否定しようね!?



「でもアナタ達、どこで修行するんですの?ピカだって四天王に狙われてるし、あまり目立つ行動はできないでしょう?」

「そこはちゃんと人目につかない場所を選ぶ。何か分かったらおじいちゃんに連絡してくれ。…行くぞ。」

「うん。ピジョ!」


ボールから出したままだったピジョの名前を呼べば、タッと私の前に降りてきた。



「それじゃあ行こっか!」

「…おい、お前。後ろに乗れ。」


グリーンがイエローに向けて言う。


「へ?」

「ひこうタイプ、持ってないだろ。」

「あ、はい…!」


グリーン、いつの間にイエローの手持ちポケモン把握したんだろ…。

というか私がイエロー後ろに乗せたかった…!

大きさ的にピジョよりリザードンのがいいのは分かってるけどさ!


「イエロー!俺のゴローンだ。つれてっていいぞ。」

「これはあたしのオムナイト。持ちポケ3匹で旅をするより心強いはずよ。」

「……!ありがとうございます、カスミさん、タケシさん。」


すっかり打ち解けてるイエロー達を見て、今度こそ頬がゆるんでしまった。



「(さっきはあんな冷たい感じだったのに、なんで今度はそんな優しい表情になってるのかしら…)イミテ!イエローにあんまりキツく当たっちゃだめよ!」

「うん。もう大丈夫。」

「(もう…?)」


にっこりと微笑む。

…イエローの想い、分かったからね!



「おい、早くしろ。」

「ハイ!」


イエローがリザードンの背中に乗って、バサア…と飛び立つ。

私もその後に続いてピジョで飛び立った。











「というか、グリーン。どこで修行すんの?」

「俺が武者修行でよく利用していた場所だ。人目にもつきにくい。」

「場所は?」

「イワヤマの荒野。」

「!」

「なんだ、知ってるのか?」

「うん。環境破壊が進んでるみたいだったから、調査に行った程度だけど…」


草木が何もない、殺風景な場所だった。

食料がないからかポケモンも全然いなくて早々に引き上げたけど…

あの場所で修行?


「あそこならどれだけ暴れても野生ポケモンに影響はないからな。」

「ああ、なるほど。ポケモンと戦うわけじゃないんだね。」

「まずは基本の動きを覚えさせる。必要なら俺かお前がコイツの相手を…」


そう言ってグリーンは後ろにいるイエローを振り返ったんだけど…


「…寝ちゃったね。」


イエローはすやすやと眠っていた。

リザードンの上で寝るなんて器用だな…


「おい起きろ!何様だお前!!」

「うーん?むにゃ…」

「寝かせといてあげなよ。疲れてるんだって。」


苦笑して言ったら、グリーンははあとため息をついて起こすのを止めた。


「甘いんだな、コイツに。」

「そう?訓練では甘やかすつもりはないけど…こーゆーときはかわいいからつい、ね!」

「…。」

「まあ、さっきはひどいこと言っちゃったけど…」


「…コイツもその意図ぐらいくみ取ってるだろう。それが分からないようじゃ話しにならない。」


「慰めてくれてるの?なんか、グリーンらしくない。ふふ!」

「調子にのるな。」

「うそうそ!…ありがと。」

「…。」



グリーンの言葉に、確かに救われた気がした。



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