空合わせの恋路、2章
□2話.浮かんでは消え
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イワヤマの荒野に着いてすぐ、イエローはグリーンにたたき起こされていた。
時刻は深夜だっていうのに、かわいそうに…
そのあとグリーンがイエローにキクコと戦った話しを「お前ならどうした?」とか「キクコのポケモンに対抗するにはどのポケモンを出す?」とかちょくちょく質問責めにしながらしてて。
イエローは最初はそれこそ一生懸命聞いてたけど、夜遅いから途中からうつらうつらしてきて。
今にも怒りだしそうなグリーンを「もうすぐ夜更けだし、寝かせてあげよう。」となだめた。
「イエロー、あっちの岩場に寝かせて来たから。」
「ああ。」
「ぷ…、ずいぶん不機嫌そうだね?」
思わず笑ってしまった。
「アイツはやる気があるのかないのか分からん。人の話しの途中で寝るか?普通。」
「イエロー、夜に弱いから。それに私達より2つも年下なんだよ。大目に見てあげなよ。」
「…。そんなによく知ってるのか?アイツのこと。」
「んー…会ったのは2回程度だけど、同じ布団で寝た仲だし。」
トキワの森の凶暴化した野生ポケモンの調査したとき、家に泊めてもらったからね。
「は!?」
あれ?グリーンには珍しい良い反応。
あ、そっか…イエローのこと男の子だと思ってるのか。
バラしていいのかな?
…止めておこう。どーせ、自分で気づくでしょ!
「ふあ…。」
と、大きなあくびが1つ。
「グリーン…私も眠くなった。寝るね。」
なんだろ…すごい急激に睡魔が…
イエローの幸せそうな寝顔みてたからうつったのかも。
「おやすみー。」
そこら辺に良い大きさの岩があったから、枕にして丸くなる。
目を閉じたら、すぐに夢の中へと引きずり込まれた。
「(謎残して寝るなよ…)」
翌朝。
目を覚ましたら、ご丁寧に身体にマントがかけられてた。
もちろんグリーンの。
昨日かけてくれたんだ、紳士だなあ…。
隣を見ると彼の姿はなかった。
洗面をすませて(こんなときのためにペットボトルに水くんで持ち歩いてて正解!)、身支度を整えて、準備完了!
たたんだグリーンのマントを片手に、彼を探すことにした。
少し歩いたところで、
「(あれ…?)」
なんだか妙な空気が流れている感じがして足をとめる。
「……!」
上を見れば、大きな岩がこっちに向かって転がり落ちてくる。
オツキミ山と同じ手段!…ってことは四天王!?
「(次は逃がさない…!)ウイン!飛んで!上に!」
ウインを出して背に乗ると、そう指示をだす。
ウインはぴょんと勢いよく跳ね、落ちてきた岩の上に飛び乗り、それを足場にしてさらに跳ねる。
崖を軽やかに登って…、あっという間にてっぺんへ!
「ほのおのうずで敵を逃げられなく…え、グリーン…?」
崖の上にいたのはグリーンで、その傍らにリザードン。
「悪い、試した。お前がどれだけ対応できるか。」
「まぎらわしいことしないでよー!敵かと思って必死になっちゃったじゃん…!!」
「岩を壊すかと思ったが、まさか飛び越えてくるとはな。」
「一瞬それも考えたけど、壊してる間に敵に逃げられたら嫌だしね。」
「(なるほど。敵を逃がさないことを重視した上での行動か。)」
「というか、私が岩に気づかなくて押しつぶされてたらどうする気だったの!?」
「ああ…、そんな可能性考えもしなかった。」
「…嬉しいような悲しいような複雑な気分にさせないでよ。…あ、グリーン。マント、ありがと。」
グリーンにマントを手渡す。
彼は「ああ。」と受け取って、早速それを身につけた。
バサッとマントが風になびく。
…こーゆー何気ない仕草がグリーン様ファンを増やしてると思うんだよね。
「今日は何するの?イエローの修行。」
「まずはアイツの力量を測る。手段はまだはっきりとは決まってないが…いきなりバトルは辛いからレベル上げとかだな。」
「ふーん。じゃ、私は特にやることないよね。この辺りの土地のこと調べてくる。」
「前に来たんじゃなかったのか?」
「うん。でも前より明らかに環境状態が悪くなってるから気になってて。土もパサパサだし。」
スッと地面に手をやる。
パラパラ…と砂がバラけて舞った。
全く栄養状態がないような、そんな状態。
私がここにきたのは3ヶ月ぐらい前だけど、ここまで早く悪化するのはおかしい。
「四天王に狙われる可能性もある。あまり目立つ行動はするな。」
「分かってる。」
ウインを戻してピジョを出す。
「イエローのことよろしくね。」
「ああ。」
返事を聞いてすぐ、バッと空に飛び立った。
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