哀歓善戦

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「…なあ、ブルー先輩すげぇ生き生きしてねえ?」


イミテとブルーとイエロー3人で、武器は何にするのが一番効率がいいかの話し合いを少し離れた場所で見ながら、ゴールドはシルバーに向けて言う。


「姉さんは買い物好きだからな。」

「ああ…典型的な女子って感じするもんな。それに比べてグリーン先輩は買い物とか必要最低限な時間ですませそうッスね!ぷっ。」


自分で言って自分でふきだしたゴールドに、レッドが笑いながら答える。


「いや、グリーンは意外と長いよな。物にはこだわるタイプだから。その刀だって、選ぶのに何ヶ月かかったことか。」

「そんなにかかってない。3週間だ。」

「は!?3週間!?ただの優柔不断じゃないッスか!」

「一生ものだから時間をかけて当然だろう。」

「へー…よく分かんないこだわりがあるんスね。ちなみにそれにした決め手は?」

「たしか、最後はイミテが決めたんだったよな。グリーンが2本で迷ってて、イミテが『こっちのが強そう』って言ったから。」

「最後の最後に!?へぇ…」

「違う。たまたまイミテの考えと合っただけだ。俺が決めたことに変わりない。」


ニヤリと意味深に笑ったゴールドに、グリーンはあくまで冷静に答える。


「こだわりがあるっつったらレッド先輩の方だと思ってました。」

「俺?なんで?」

「ほら、前にその剣特注品だって言ってたし。優柔不断そうだし。」

「…一言多いぞ?ゴールド」

「じょ、冗談ッスよ!」


笑顔で言ったレッドに(ただし目が笑っていない)、ゴールドは身の危険を感じてあわてて弁解する。


「特注品って言っても、柄の形はこれで、色はこれでって、大体のイメージ決まってたからな。」

「そうはいうがレッド。お前こそ、最後の最後に、イミテの一言で決めただろう?柄の色。」

「ちげーよ!それは、俺が先に決めて、イミテが『この色いいね』ってほめただけで…、」


「……どいつもこいつも、似たり寄ったりだろ。」


これまでの過程を聞いて、シルバーがぽつりとつぶやく。


「「!?」」

「…お前って先輩にも容赦ねえんだな。すげえよ。」


驚きのあまり彼の方を見てしまったレッドとグリーン。

ゴールドは尊敬と憐れみのまじった視線をシルバーに向けていた。



「おまたせ〜♪」


すると、丁度イエローの武器を選び終わったらしく、ブルー達が戻ってきた。


「決まったのか?」

「ええ。こんな感じ。」


そう言ってブルーは買い物用のかごを見せる。

そこには、たくさんの爆弾や薬(しびれ薬や毒薬)や目くらましようの武器などと、1本の短剣が入っていた。


「イエローは直接人を攻撃することに慣れてないってイミテが言ったから、主な武器は爆薬とか間接的なものの方がいいかと思って。あ、この短剣は念のための護身用ね。」

「今まで使ってたナイフと違うのか?」

「ええ。でも今まで持ってたものよりコンパクトで切れ味もいいのよ。もし接近戦になっちゃったら、イエローの背が低いのを利用して相手のふところにもぐりこんで、そのままグサッと一発!」

「…シルバーの容赦ないとこってブルーに似ちまったのかもな。」

「なによそれ。アンタ達は?武器選んだの?」

「「「「あ…」」」」


4人の声が重なる。

話をしていて武器を選ぶことをすっかり忘れていた。


「もー!役にたたないわね!」

「なにしてたの?」


これにはイミテも苦笑して聞く。



「…まっ、しいていえば、イミテ先輩は皆に愛されてるなあって感じの話ッス。」


ゴールドの一言に、一瞬その場の空気が固まった。

ゴールドが自分の気持ちを伝えてから、彼とイミテの間には少しぎくしゃくとした空気があったからだ。

ぎくしゃくというのははっきりとしたものではなく、イミテもゴールドもお互い普通に話しかけるのだが、
ゴールドは普段言うような冗談はあまり言わず、イミテもイミテで一言二言話題をふるといった腫れ物にふれるかのようなものであった。


だからこそ、ゴールドの今の発言は、一気に確信に迫ったようにもとれて、場の空気を凍らせたのだ。

当の本人達以外は黙ってその成り行きを見守る。



「なにそれ。」


……イミテはうっすらと笑って、それを冗談としてかわしたのだった。



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