空合わせの恋路3章
□0話. 闇に溶けて消えた
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「わあ…!」
思わず声をもらせば、博士がははは!と笑っていた。
「そうか。この場所に来たのは初めてか。」
「はい。前は違う出口から出てセキエイ高原に向かったんで。綺麗な場所ですね!」
「ここからはもうジョウト寄りじゃから、カントーにはいないポケモンも出てくるかもしれんのう。」
「え…!やった!」
初めての場所ってテンション上がる!
新しいポケモンかあ…レッドが聞いても絶対喜ぶだろうな!
「はりきるのはいいんじゃが…、イミテ。」
「?はい。」
「お前の図鑑をこの前バージョンアップしたじゃろう?」
「新しいポケモンのデータも読み込めるようになったんでしたっけ。」
「うむ。…そのついでに、ポケモンを捕まえる気にはなってくれんかのう。ジョウト地方にいる図鑑所有者はイミテだけなんじゃ。だから…」
そう言って博士は言葉を濁す。
言いたいことはばっちり伝わった。
ジョウト地方のポケモンのデータを集めたいってことなんだろう。
なんせ博士は研究者だし、そのためにジョウト地方に来たんだし。
でも……。
「無理です。」
「な…!」
「私、手持ちに加えないのにポケモンを捕まえるって何だか気が進まなくて。だって相手の子は私と旅をしたいって思って捕まってくれたかもしれないのに、そのあと旅に連れてってもらえないばかりか、見ず知らずの場所に転送されちゃうんですよ?」
「まあ…そういう場合もないことはない、が…」
「百歩譲って研究の範囲内で必要なポケモンがいるとなったら、捕まえるお手伝いはします。もちろんその時は1匹1匹事情を説明してから捕まる、と思うので時間がかかるかもしれません。」
「…。」
「で、自ら率先して図鑑を埋める旅にでる、とかは嫌です。」
「だからお前の図鑑は捕まえたポケモンの数が6匹しかいなかったのか。」
私がきっぱりと言い切ると、博士ははあ、とため息をついた。
きっと図鑑所有者の中でポケモンを捕まえた数が少ないのは私なんだろうな。
「あはは…すいません。捕獲以外でならばっちりお手伝いします。」
へらっと笑えば、今度は博士も苦笑した。
「ここにくるまでですでに十分助けてもらったからのう。無理強いはできんな。ワシが地道に集めるとするか。」
「博士…!博士ってやっぱり優しいですね!大好き!」
「(孫がもう1人増えたみたいじゃのう。)研究面でのサポートも期待しとるからな。」
「はーい。…あ。」
返事をして博士の方をみたときに、ふっとあるものが目に入った。
「博士。あの山ってなんですか?」
セキエイ高原に行く途中にも見かけて、すっと気になってたんだよね。
「ん?ああ、シロガネ山のことか。」
「シロガネ山…」
「うむ。この場所よりもレベルの高い野生ポケモンがたくさん生息している。だから足を踏み入れるものは早々以いない山じゃ。」
「へー…」
レッドとかこの話聞いたら目、キラキラさせて喜ぶだろうな。
「博士は登ったことがあるんですか?シロガネ山。」
「若い頃にな。まあ、ふもとの方をちょこっと探索した程度じゃったが…。おお、そうじゃ。知り合いに聞いた話じゃと、山の頂上の方には温泉がわいているらしいぞ。」
「温泉!!??本当ですか!?」
「ほ、本当じゃよ。天然のな。」
うわー!!山の上に温泉とか!
すごいすごいすごい!
いつか行ってみたい!!
「博士!ここからどのくらいかかるんですかねえ!?」
「いやだから、あの山にはレベルの高いポケモンが、」
「大丈夫です!!」
「一気に目をキラキラさせよって…。まあレベルが高いといっても、イミテならどうにかなるかもしれんのう。あとで聞いておいてやろう。」
「わーい!」
それまでにポケモン達のレベル上げておかなくちゃ!
「博士、イミテちゃんに甘いですよ…」なんて助手の呟きが聞こえたのはきっと気のせいじゃない。
そのあと俄然やる気がでてきて、さくさくと進むことができた。
ジョウトの最初の町、ワカバタウンに着いてからは、私はピジョ、博士たちはカイリューにへんしんしたメタモンのメタの背中に乗って、目的のヨシノシティを目指したからいっそうスムーズに進んだ。
そして。
「見えてきましたよ、あれがヨシノシティです。」
研究員が指さして言う。
トキワシティぐらいの大きさの町がそこにはあった。
ジムもないっていってたもんね、こんなもんか。
…少なくともマサラタウンよりかは広いや。
「(着いたらちょっと寝かせてもらおう…)」
ポケモンバトルに慣れているとはいっても、こんなに大人数を庇いながら戦ったのは始めてだから、思ってる以上に気をはっていたみたいで。
結構眠気がピークだ。
と、そんなことを考えていると…
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