空合わせの恋路3章

□0話. 闇に溶けて消えた
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「う、わ!?」


突然ピジョが止まって、下に向けてかぜおこしを放った。

危ない…!気、ぬいてたからあとちょっとで落ちるとこだった…!!


「む…!野生のポケモンのようじゃな!」


まだバクバクいってる心臓をなだめてると、生き生きとした博士の声が聞こえてきた。

下に目をやれば、赤い身体に黒い模様が点々とある、羽のあるポケモンがいた。

見たことない子だ。


「新種のポケモンのようじゃの!イミテ!ポケモン図鑑を!」

「あ、はい。えーと、どこやったかな。…ああ、これだ。」

「…。」


もうすぐ目的地に着くと思ったからついさっきカバンの中にしまっちゃったんだよね。

取るのに戸惑っていたら博士が何ともいえない目で見てきた。…仕方ないじゃん!


「ええと、いつつぼしポケモン、“レディバ”、だそうです。」

「レディバ、か…!…イミテ、捕獲を頼めるかな?」

「博士、少し前の私の話聞いてくれてました?研究用のポケモンはあまり捕まえたくないって、」

「わしが育てる!ニックネームはレディっちじゃ!」

「…本当にモンスターボールに入れっぱなしとかしないですか!?」

「うむ!」

「絶対にパソコンに転送しませんか!?」

「うむ!」

「ちゃんとパーティとしてメンバーにいれますか!?」

「うむ!」


何だか捨てられてる動物を飼おうとしている子供とお母さんみたいですね、なんて声がまた後ろから聞こえてきた気がする。

博士の手持ちになるのなら、この子は少なくとも不幸になることはないだろう。

捕まえてみて悲しそうな顔したらすぐに逃がそうっと。



「レディバ…だっけ?ごめんね。バトルしよっか。」


怖がらせないようにできるだけ優しい口調で、笑顔をうかべて言う。

レディバがきょとんとしてこっちを見ているのを確認して(とりあえず怯えてはいないみたい)、サンの入ったボールに手を伸ばして…


「レベルもそんなに高くないみたいだし…、サン。軽くでいいからね!でんじは=I」


バトル慣れしていないレディバは、逃げることも攻撃してくることもなくそのままでんじは≠もろに受けた。

痺れてフラフラとよろけるレディバにモンスターボールを投げる。

捕獲は弱らせるのが基本だけど、無抵抗なこの子を見てたら攻撃できなくなっちゃって。

ボールがレディバに当たって、赤い光がレディバを包みこむ。


「ピジョ!」


ピジョに動いてもらって、それを空中でキャッチした。

手のひらでカタカタと動いているボール。

うーん…これで捕獲できなくて、ボールが開いた瞬間にレディバに攻撃されたら怪我するかなあ。

なんて、呑気にそんなことを思う。

一応隣では何の指示もしていないのにサンが攻撃の体制をとっていた。

トレーナーよりポケモンのが状況把握できてて用心深いなあ、なんてことをまたのろのろと思っていると、


「…あ。」



ピタリ。ボールが動かなくなったのを感じる。

すぐに振り返って博士ににっこりと笑いかけた。


「博士!レディバ、ゲットです。」


博士はまるで子供みたいに、嬉しそうな顔で笑っていた。









そのあとすぐにヨシノシティにある研究所に着いた私達。


「よしよし、可愛いのう。」なんて博士の声が研究所に優しく響く。

レディバ…通称レディっちは早くもとても可愛がってもらっているようだ。

レディバ、心なしかビクビクしてる気がするんだけど大丈夫かな…。

そんなことを思いながらマサラタウンから持ってきていた書類を片づけていると。


「イミテちゃん。疲れただろう、今日は休んでいいよ。」

「いえ、ここの片付けまだ終わってないんで。」

「いいのいいの!そんなの僕達がやっておくよ。今日はイミテちゃんにお世話になりっぱなしだったから。お風呂沸かしといたから、入っておいで。」

「そうじゃぞ、イミテ。今日はもう休みなさい。」


「博士まで…。じゃあお言葉に甘えます。」


皆優しい!

話が終わった直後「そうじゃ!」と、博士が声をあげた。


「イミテに渡しておかねばならんものがあったんじゃ。ちょっと待っててくれるか?」 

「?はい。」

「ついでにレディっちを持っててくれ。」

「あ、はい…。」


ずいっとレディバを渡されて、それを両手で慎重に抱きかかえる。

わ…軽いなあ、この子。

くりくりとした2つの瞳が、様子をうかがうようにして私に向いていた。


それに対してただ笑みを返す。


大丈夫だよ。
怖くないよ。
心配しなくていいんだよ。


そんな思いを、目に込める。



「!」


すると、すり…っと、レディバがほんの少しこっちに身体をこすってきたのを感じた。


「可愛いねえ、キミ。」


これには顔がにやけてしまうのをこらえられなくて、緩みきった顔のままレディバの頭を撫でた。

特に嫌がる様子はない。



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