空合わせの恋路
□1話.幼き日の記憶
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数十分たって、ようやく目的の場所に到着。
「わあ!やっぱり素敵なところだなあ。」
キレイな景色とすんだ空気に、思わず心がおどる。
「ふう、喉かわいた…。」
家からここまで急いできたから、結構つかれた…。
そんな時タイミングよく私の目に映ったのは、湖。
こんなにキレイだし、飲んでも平気だよね?
湖に近づき、そっと手のひらですくって口にはこんだ。
「うん、おいしい。」
水面をのぞきこめば、私の姿が映っている。
前住んでたところは湖なんてなかったから、そんな当たり前のことがすごく嬉しい。
少し感動しながらぼー、と水面を見つめていたら、ブブブ…という奇妙な音が聞こえてきた。
「?なんの音…?」
辺りを見回すけど、何もない。
「気のせい、か。」
ほっと息をつき水面に視線を戻せば…、さっきとなにかが違う。
その違和感の正体は、水面のはしっこに映った、黄色と黒のしま模様。
ばっ、とふり返ると、そこには触覚と羽がはえた生き物がいた。
「ポ、ポケモン!?」
思わず叫ぶと、そのポケモンの赤い目が不気味に光った。
まるで私にねらいをさだめたみたいに…。
そして、ゆっくりとポケモンはこっちに近づいてくる。
「こ……こっちこないでー!!」
ガタガタと震える体をなんとかコントロールしながら、私は一目散に走りだした。
あのポケモン見たことある…!
確か名前はスピアーって言って、お尻の先に毒針があるから気をつけなさい、って昔、お父さんが言ってたっけ…。
やだ…!
前きたときはポケモンなんていなかったのに、なんで今日にかぎっているの!?
「(まさか追いかけてきたりしてないよね…!?)」
ドキドキしながら後ろをふり返ると、1匹だったはずのスピアーは大群になって飛んでいる。
「増えてるー!?……う、わっ!?」
後ろ見ながら走ってたら足元の石に気づかなくて、つまづいた。
ドサッとその場に倒れる。
「ちょ…、待っ…、」
逃げなきゃ!と気持ちばかりがあせって手足がうまく動かせない。
そんな様子を見て、しめたと言わんばかりにスピアーの毒針がとんできた。
もう、無理だ…!
逃げられない…!
乱暴で凶悪で、やっぱりポケモンなんて、だいっきらい!!
私は堅く、目を閉じた。
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