哀歓善戦

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「タケシから何も聞いてない?」

「?はい。」

「…てっきり、入隊した時に説明受けてた思ってた。あー…確認しとくべきだったな…。」


イミテははあ、とため息まじりに言う。



「この城の軍隊の新人はね、入隊してから一定の期間がすぎたら、必ず考査を受ける決まりがあるの。」

「考査って、実力をみるってことですか?」

「うん。どれだけ上達したかを確認するのと同時に、軍人としてこの城に必要かどうかを調べるの。」

「え…それって、必要じゃないって判断されたら…、」

「もちろん、この城から追い出される。」


イエローの言葉に、イミテはコクリとうなずいて言った。



「こ、考査の内容って何ですか…?」

「ん?タケシと戦うこと。」


それを聞いたとたん、サー、と、イエローの顔が青ざめる。



「あ、戦うといっても一撃くらわせれば合格だから。そんなにかまえなくても大丈夫。」


イミテはイエローの頭を撫でて言う。



「…タケシは優しいから、イエローなら簡単に合格できるよ。」

「へ…?」



「考査までまだ時間もあるしね。さ、練習しよっか。」



首を傾げたイエローに、イミテは笑って言った。














それから3日後の朝。


城の裏庭には、対峙して立つイエローとタケシの姿があった。

そんな2人をたくさんの軍人が囲むようにして立っている。

もちろんその中にはイミテの姿もあり、腕組みをして様子をうかがっていた。



さらに、金がほどこされた椅子に座ってふんぞり返っているのは、この国の王だ。


そう、今日は例の新人考査の日。



「新人、準備はいいか?」

「はい…!」


イエローは少し緊張気味に返事を返す。


自分は何としてでもこの場を切り抜けなければいけない。


もっと強くなるために。

強くなって、復讐するために。


…そして、自分の面倒を見てくれたイミテのために。


「(だいじょうぶ。毎日、修行したんだから…!)」


イエローはグッと拳をにぎり、タケシを見据える。


それと同時に、ゴーンと考査開始の鐘が鳴った。






まず動いたのはイエロー。

素早い動きで、タケシの背後に周りこもうとする。

力でタケシに叶うはずがないことは分かりきっていたから、素早さでスキをつくしかないと考えていたのだ。


案の定、小柄なイエローのほうが動きは早く、いとも簡単にタケシの後ろをとった。



「(今だ!)」



イエローは思いっきり回し蹴りをする。

が、それをタケシは片手で止める。



「わ…!」



足をつかまれてバランスを崩したイエローは、その場に前のめりに転んだ。



「いたた…。」


「(やっぱり…。素早さでは勝てても、それを決定打にできるほどの力がイエローにはまだない。)」


痛みをこらえながら必死に立ち上がるイエローを見て、イミテはいたって冷静に状況を把握する。



「次はこっちが攻撃する番だな。」

「へ…、」


立ち上がったイエローに、今度はタケシがズイッと近づいた。



「!」


彼の拳がイエローの顔目掛けて真っ直ぐとんできて、イエローはすかさず腕を前に出して守りにはいる。



「い…!?」


顔に当たることはなかったが、その攻撃をかばった腕にビリビリという異常な痛みがはしった。

1回の攻撃が…とてつもなく重い。



「(タケシさん、力ありすぎ…!)」


イエローはたらりと冷や汗をかいた。



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