哀歓善戦

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「よーし!旅するためにも、もっと強くなるぞ!」


レッドはそう言いながら、剣を太陽に照らした。

彼の思いに応えるかのように、ギラリと剣に当たった光りが反射する。



「私も!強くなる!」

「「!?」」


思ってもいなかったイミテの言葉に、レッドとグリーンは驚き彼女を凝視した。



「いやいや!イミテはそうやって花つんでるほうが似合ってるって。」

「お前…、剣とか持ったことないだろ。」


イミテは草花や動物が大好きで、武道や剣術など習ったことがない。

なにより心優しいため、小さな生き物すら殺生できないような性格なのだ。



「ちょっと2人とも!バカにしないでよねっ!」


イミテはビシッとそう言うと、さっきからつんでいた花を木の根元に置く。

そしてそのまま後ろに回りこみ、何かを持ってレッドとグリーンのもとに駆け寄った。



「なんだそれ?」

「弓矢か…?」


「あったりー♪」


イミテは弾む口調でそう言うと、弓を構えてひく真似をする。


「お父さんがね、私が大きくなったから、弓矢の使い方教えてくれるんだって!」

「へー!イミテ、前からやってみたいって言ってたもんな!」


実はグリーンと出会うより先に、レッドとイミテは友達だったのだ。

お互いの両親同士も仲がよく、ある程度のことは分かり合っている。



「イミテのお父さん…弓矢がうまいのか?」

「うん!どんなに遠くにあるものでも命中させちゃうんだよ。」

「そうそう。俺も前に1回見たことあるけど、すごかったぜ!グリーンも後で見に行って見ろよ。」

「…ああ。」



2人の様子を見て、イミテは嬉しそうに笑った。



「よーし、そうと決まれば誓いをたてようぜ!」

「誓い…?」

「ああ!手、重ねて。」

「?うん。」


ワケも分からず、イミテは言われたとおり手をかさねる。


「グリーンも、ほら。」

「………。」



3人の右手がしっかりと重なりあったのを見て、レッドは大声をだす。



「誰にも負けねえぐらい、3人で強くなるぞー!!」

「「オー!!」」


イミテは左手に握りしめていた花を、空高くほうり投げた。

必然的に花はヒラヒラと舞いながら落ちる。



「えへへ。祝福の花ふぶき!」

「おー。やるじゃん、イミテ。」


「はあ…。」


呆れたようにため息をつくグリーン。

でも、その表情はなんだか満更でもない様子で。


レッドとイミテもそれを見て嬉しそうに笑った。













それから数ヶ月後。


「ちょっとちょっと!こんなことしなくても…なっ?イミテ?」


なにやら騒いでいるレッド。

彼の頭の上には真っ赤なリンゴがちょこんと乗っていた。


「大丈夫!絶対はずさないから!信じて?」


弓を構えてそう言うイミテ。

どうやらイミテはリンゴだけに矢を当てようとしているらしい。


たじろぐレッドを見て、グリーンは隣でさぞ愉快そうな笑みをうかべていた。


レッドはそんなグリーンをにらんだが、イミテに「動かないで!」と言われしぶしぶ視線を元に戻す。



「よーし…」と言うと、イミテは数十メートル離れたところからギリッと矢を引いた。


「おい、マジでやんのか…!?」

「大丈夫だって!」

「レッド、お前は黙って目をつむってろ。」

「人事だと思って…!分かったよ!信じるからな、イミテ!」

「うん!」


レッドはギュッと目をつぶる。



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