哀歓善戦

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「……裏で王族を操ってる奴がいるんだ。私も顔は知らないが…名をサカキという。」

「サカキ…か。」

「その人の目的は?今どこにいるの?」

「実質的な連絡はアイツの部下がやっていて、名前以外は全て伏せているんだ!アイツのしたいことなど分かるか!」


「(黒幕の名前が分かっただけでも大きな進歩ととるべきか…。)」

「仕方なくだとしても、アンタがトキワの森を焼き払ったのは事実。どうせそのサカキってやつからお金でももらって動いたんでしょう?」

「…!」


「それに、私はアンタが今までに働いてきた悪事を全部見てる。とりあえずそのおとしまえは、きっちりつけてもらうから。」


イミテは静かに弓を構えた。


「………。」


レッドは特に彼女を止める様子もなく、事の成り行きを傍らで見守っている。



「ま、まさか殺そうとはしてない…よな?」

「……。」


王の言葉を無視して、イミテはギリッと矢をひく。


「待て!早まるな!ワシは一国の王だぞ!」

「……私は、アンタを王だと認めたことは一度もない。」

「なんだと…!?」


「王は、民のことを一番に考え、常に国をよくしようと動くもの。民に慕われ、軍からは絶対の信頼をよせられる…そんな大きな器を持った人のことを言うの。」


イミテの冷たい視線が、王をとらえる。



「…そんな器がアンタにある?」

「貴様…!」


「アンタは王にふさわしくない。」



イミテはきっぱりと言い切った。

何のためらいもなく。



「ふざけるな!私こそが王に値するにふさわしい存在だ!」

「だったらこの国はもっとよくなってるはず。侵入者や反乱者なんて1人もでないはず。…違う?」


「それは私のせいじゃない!侵入者がでるのは民がクズだから、そして、それを止める軍人が甘いヤツらばかりで使いものにならないからだ!!」


それを聞いたレッドとイミテはチラリとお互いの目を見て、また王に視線を戻した。



「ふざけるな。自我の欲望の為に何でも手に入れようとする奴に、王を名乗る資格なんかない。」


レッドはそう言うと剣を王に向け、じりじりと近づく。


「や、やめろ…!」




王とレッドの距離がみるみるうちに縮み、後数十センチというところで…


「失礼します、王!侵入者の件ですが…、!」


ガチャリとドアが開き、軍人が現れた。

王に剣を向けるレッド達の姿を見て、いまいち状況が理解できず部屋に沈黙が流れる。


「お、お前ら、早く助け、」

「動くな!」


「「「!!」」」


軍人達より早くレッドがバッと王の背後にまわり、首に剣をつきつけた。

軍人達はその行動に皆動きを止める。



「イミテ!どこか脱出口はあるか!?」

「ちょっと待って。確認してくる。」


このまま王を人質に逃げてもいいのだが、たくさんの軍人がいる城内を通るのはリスクが高い。

蔓を伝ってバルコニーから逃げるのも時間がかかるし、軍人達に見つかった今、下に降りる頃には先回りされてしまうだろう。


「(やっぱり、飛び降りるしかないか…)」


レッドに言われてクッションを用意しておいて正解だった、と心の中でつぶやき、確認のためイミテはバルコニーに出て下を見た。


……まさにその直後、

「や…!」

彼女の口から小さな悲鳴がもれた。



「イミテ!?」


レッドが驚きながらあわててそっちに目をやると、自分が今王にしているのと同じように、首元に短剣を当てられているイミテの姿があった。



「やっぱり来たのか、お前ら。約束通り、今回はばっちり捕まえてやるから安心しな。」


短剣を持っているのは、今日町で会ったあの男だ。



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