哀歓善戦

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「おい、ガキ。剣を捨てろ。そうすればイミテだけは見逃してやる。」

「!」

「レッド!絶対だめ!そんなの嘘に決まってる!」

「お前は黙ってろ。…なあ、遠征の話しだって本当だったろ?」


軍人の人数からして、今剣を捨てればもう絶対に逃げられない。

しかし、男が約束を守ってくれるのならば…イミテだけは助かる。


「……。」


彼を信じてもいいのだろうか…?

レッドは思わず黙りこんだ。




「王を人質に、逃げて。」


すると、イミテの凛とした透き通った声が部屋に響いた。


「イミテ、何言って、」

「それが一番賢い選択だよ、レッド。この男が約束を守るとは思えない。」

「だからって」

「このまま2人して捕まる気?…私は平気。自分で必ず何とかするから。」


イミテは穏やかな笑みをうかべ、レッドに言った。



その笑顔と、何かが重なる。





“これでよし!さ、森へお帰り。”

一瞬頭によぎったのは、薄桃色のハンカチを左足にまいた真っ白な一匹のウサギが、不格好ながらもぴょんぴょんとはねる姿…。





「っ!(なんだ、今の…)」


レッドは思わず頭をおさえる。


「……レッド?」


その様子を不審に思いイミテが声をかければ、レッドは彼女を少しにらんで言った。


「…イミテ、昔からそうだった気がする。」

「なにが…?」

「必ず自分を犠牲にするだろ!?他人のこと1番に考えすぎなんだ!」

「!そんなことない。」

「嘘つくなよ!イエローの時だって、自分を犠牲にしてまでイエローを逃がしたんだろ!?」

「あれは私が油断してただけで、自分を犠牲にしたんじゃない!」

「…っ!なんで…!」


レッドはいかにも納得がいかないといった様子だ。



「おいおい。仲間割れか?さっさと答えを聞かせてもらおうか、ガキ。」


ニヤニヤと笑って言う男に、レッドはイミテのほうにチラリと目をやって言った。



「……イミテ。もう少し自分のことも大事にしろ。」


レッドが剣をその場に落とし、カランカランと金属の音がどこかむなしく部屋に響く。



「ククッ…、ハハハ!」

「笑ってないで、さっさと、」

「やっぱりガキだなあ、お前。本気で俺がそんな約束守ると思ったのか?」

「な……!」


「動くな!」


男がイミテに突きつけている短剣を少し動かし、慌てて剣を取ろうとしたレッドの動きを止めた。


「いっ……」



その拍子に剣の刃があたってしまったようで、イミテは軽く顔をゆがめる。

男はその様子を見て「おっと、悪い。」とわざとらしい不気味な笑みをうかべた。



「(くそ…!)」

「お前ら、手錠を。」


男に指示された軍人達はジリジリとレッドに近づく。


「!」

「っ…!(レッドは身動きがとれないし、いちかばちか足払いでもかけてみるしかないか…)」


多少の怪我は仕方ない、とイミテが攻撃体勢にうつろうとした時…


ドン!!



そんな大きな爆発音とともに、部屋の中はあっという間に白い煙幕に包まれた。



「っ…!」


何も見えない状況の中、男は頬に鋭い痛みを感じ、とっさにその場から距離をとる。



「(どこだ…!?)」


男はその気配を探ろうとジッと集中する。



しかし、

「お前ら何をしている!私に危害がくわわったら承知しないからな!」

「(こんな時に…)……窓を開けろ!早く!!」


そんな王の言葉に内心苛立ちながらも、他の軍人に指示をだした。



窓が開き、煙が完全に晴れた頃……

「!くそ!あいつら…!」

そこにレッドとイミテの姿はなかった。

男は頬からでた血を腕であらく拭うと、短剣をガッと壁に突き刺して言う。


「なんとしても見つけ出せ!いいな!」



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