哀歓善戦

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「どこ行ったの…?」


クリスはキョロキョロと辺りを見回す。

必死でついてきたはずなのに、ゴールドの姿がなくなってしまった。


やはり、男女では体力の差があるからだろうか?



すると、階段の上からパンパンという音が聞こえた。
ゴールドが両手をあわせ、慣らしていたのだ。


「鬼さんこちら、手の鳴る方へ!」


完全に遊ばれていることに、クリスはムッとした表情になった。


「ほらほら、早くしないとおいてくぞ!」


ゴールドがまたかけだしたため、クリスも必然的に後を追いかける。




そんなことが何回か続いて、ついに彼らは最上階へとたどり着いた。




「はあ、はあ…。もう逃げ場はないわよ!」

「そうみてーだな。」


クリスは札を、ゴールドは棍棒を構えてそれぞれ向き合う。



「悪いけど、アナタにはここで死んでもらうわ!」


そう言うとクリスはビュッと勢いよく札をとばした。

ゴールドはひょいっ、とそれを容易くかわす。


「へへ、こんなん目えつぶってても避けられるぜ!」


ゴールドが余裕の表情をうかべていると、後ろからヒュッという音が聞こえた。


「!?」


慌てて棍棒を振り、自分の周りに電気をまとわりつかせ、振り返った。

するとジュッという音をたてて、床に落ちたのは、端がこげた札だった。


「さっき避けたはずなのに…!お前、何者だよ!」

「……私も、アナタと同じ能力者よ。」

「能力者…。うすうす気づいてたけど、やっぱりな。」


ゴールドはチッと舌打ちをしながら棍棒を構える。



「何の能力だか知らねーが、ようするにその札に当たらなきゃいいんだろ!札がなくなるまで、全部避けきってやるよ!」

「そんなの無理よ。だって……、」


クリスは札を構え、3枚同時にとばした。

ゴールドは札の動きを見極めようと、ジッと集中してそれを見る。


すると1枚は真っ直ぐとんできたものの、残りの2枚は彼の左右から向かってきた。

明らかに、普通の札では考えられない動きだ。


「な…!?」


驚きながらもゴールドは、また電気をつくり、その熱で札を焼き尽くした。



「だって、…私は、風の能力者だから。」


「風!?」



ビュウっと、風の音がして、パラパラと数十枚の札がクリスの回りを飛び回る。



「そうよ。そのおかげでこの札は自由自在に動かせる。だから、アナタが操られるのも時間の問題。」

「くそ!」


ゴールドは棍棒からクリスに向けて一直線に電気を発した。

しかし、バチっという音をたてて、その軌道はそれてしまう。


「!」

「言ったでしょ?私の能力は風。札からは微量の風がまとわりついていて、空気の流れを変えているの。だから、アナタの攻撃は効かない。」

「なるほど。…さすがイミテ先輩。確かに、ただの札じゃないってワケか。」



ゴールドはイミテが言っていたことを思い出し、そこまで見極めていた彼女を改めて感心した。

それと同時に困ったように苦笑する。



「分かったら大人しく…」

「そりゃあできねえなあ。お前、俺がただ逃げようとしてここに来たと思ってんのか?」

「え…?」

「ここにくる途中に、もしもの時のための対策はたててあるんだよ!」


ゴールドはそう言うと、ぶん、と棍棒を振りかざした。

するとバチバチと眩い光を発する電気がおきて…、



「きゃああ!」


クリスの元へと届いた。

彼女は全身がしびれてしまったようで、がくりとその場に倒れる。



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