空合わせの恋路、2章

□3話.罠と囮と
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考えるよりも
身体が先に動いてしまうのは

自分の限界はこんなものじゃないって

本能的に分かっているから











「イミテ。修行に付き合え。」


「………へ?」


早朝。

洗面と着替えはすませたものの、まだ寝ぼけ眼で朝食のクロワッサンをかじっている私に、グリーンがそう声をかけてきた。


「今日は暇なんだろう?」

「……?」

「何も予定ないだろ?」

「…うーん。うん。」

「どっちだ。はっきりしろ。」

「?うん。」

「…。」


まだ思考がはっきりしない中、とりあえず頭にうかんだ言葉を口にしていると、グリーンが呆れたように無言になる。


お。でもしゃべってたらだんだんと頭がはっきりしてきた気がするぞ!


「修行って、なに?」


そう聞けば、グリーンは眉をひそめて答える。


「…心身ともに己を鍛えて、より強さを目指し求めることだ。」


「えっと…、それはボケたのかな?笑うところ?それとも私をバカにした答えなの?」

「まあ…半々ってとこだ。」

「半々なの!?私をバカにしたことにも反論はあるけど、それよりグリーンがボケたことの方がびっくりなんだけど!!」


食べかけのクロワッサンを最後の一口を食べ終えて、グリーンを改めてみる。


「修行は、まずウォーミングアップもかねたバトルを軽くして、それから…」

「!バトル!」


グリーンの言葉に反応して、つい立ち上がってしまった。


「なんだ?」

「んー?セキエイでのポケモンリーグが終わってから、ずっとグリーンと戦いたいなあって思ってたからさ。」


私は思ったままの言葉を口にする。


「ほら、私、不戦勝で決勝戦までいったじゃん?だから戦ってもいないのに私が2位でグリーンが3位って、なんかすっきりしなくて気持ち悪い部分があったんだよね。」

「そんなこと思ってたのか。」

「あ。それ抜きでも戦いたいとは思ってたよ。前にバトルしたときは負けちゃったからリベンジしたかったし!」


ふたご島に行く前のときだったよね。
2対2のバトルして負けちゃったやつ。


悔しかったな、あれは。


「…まあ、俺もお前ともう一度バトルしたいとは思ってたが…」

「え、ホントに!?わあ…なんか嬉しいもんだね。こういうの。」

「軽いウォーミングアップだからリーグ戦のような6対6のバトルはしないぞ?」

「十分!むしろシンプルに1対1でいこうよ。」


今度こそ絶対勝ってやる!

私が小さく意気込んだのを見て、グリーンはフッと笑みをうかべた。


「バトルする前にイエローの様子を見に行ってくる。」

「あ!私も行く!」


グリーン、イエローに追いかけて来たキャタピーを捕まえるように言ってたんだよね。

どこまでキャタピーのレベルが上がってるか楽しみだな。










「この辺で修行してたはずなんだが…」


グリーンと一緒にイエローがいるハズの場所に来た。

キョロキョロと辺りを見回す…と、


「あ!いた!…?」

「!?」


泥だらけのボロボロの姿で、おまけに息切れしているイエローを見つけた。


「イエロー!どうしたの!?何があったの!?」


あわててイエローに駆け寄る。



「!イミテさん、グリーンさん…。」


イエローははあ、と息を整え、そして言った。


「まだつかまえられませ〜ん。」


「え…」


イエローから少し離れたところには無傷のキャタピーがいた。

冗談…なわけないよね?

さっきのグリーンみたいに冗談だったらどれほどいいか!!


「に、苦手なんです、捕まえるの。」


グリーンを振り返ってみれば、目と口を大きく見開いていた。

グリーンにこんな顔させるなんて…イエローってすごいなあ…。


「捕まえる前に傷つけなきゃならないでしょう?それがどうしてもできなくて…。」


ああ、どうしよう…。

私も開いた口がふさがらないや…。


「なんとかバトルせず捕まえられないか練習してたくらいで…。人やポケモンを助けなきゃと思ったときはいつも無我夢中だし…。」


イエローはポリポリと困ったように頭をかきながら言った。



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