空合わせの恋路3章

□3話. 特別の証
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本当の強さを手に入れるときは

自分の弱さに気づいたとき















ヨシノシティ警察署の廊下にて。


「はい。ええ、今ちょうどヨシノシティの警察署です。…はーい。じゃあ博士が来るまで、あの子達のこと見張ってますね。はい。」


ピッ、とポケギアを切る。

博士もちょうどもうすぐヨシノシティに着くところらしくて、合流することになった。

直接彼(ゴールド)に話を聞きたいらしい。


「はあ〜…」


大きく息を吐く。

窓から外を見ればもうすっかり真っ暗だった。

ワカバタウンからヨシノシティまで移動するのにかなり時間かかったもんね。

それに加えてゴールドに対する事情聴取もだいぶ時間がかかってる。


「(博士、早く来ないかなあ…)」


思わずでそうになったあくびをかみころす。

ちょうどその時、ガチャリと部屋の扉が開いて、ゴールド達が出てくる。


「ありがとう、……ん?君はもう先に事情聴取が終わってたはずじゃ…ああ、彼らのことを待ってたのか。」


警察官が壁にもたれかかっていた私に気がついてそう声をかける。


「はい、ちょっと彼に用事がありまして。」

「え!?俺に!?…いやあ、照れるなあ。俺の活躍に惚れちまったんですか、…ええと…、」

「イミテ、です。」
 
「そうそう!イミテ先輩!」

「せ、先輩…!?」

「ジムバッジすげえ持ってるみてえだし、同じポケモントレーナーとしては先輩っスからね!」
 

いや、そうはいっても響きが恥ずかしいんだけど!


「君たち。今夜はもう遅い。家に連絡して、ここに泊まっていくといい。」

「いや、イイっス。これからイミテ先輩とデートなんで!ね!」

「は!?いや、しないし!」

「え、なんでっスか。そのために俺を待ってたんでしょう?とりあえず行きましょう!いやー、疲れた疲れた!」


腕を頭の後ろで組んでゴールドは歩き出す。じ、自由な子だなあ…。















幸いさっきのデートっていうのは冗談だったらしく、ヨシノシティから少し外れたところに彼らはテントをたてた。

今日はここで野宿をするらしい。

ちなみに行き違いになったら困るから、今ピジョに博士を迎えに行ってもらってる。


焚き火をおこしてからゴールドは、地面に寝そべったままなにかを考え込んでいるようだった。


「なんで泊めてもらわなかったでやんすか?」

「……。」


ゴロウくんの問いかけにも沈黙が返ってくる。

何を、考えているんだろう。


……というか、
彼を真似て隣で寝そべっているエイパムがめっちゃ可愛い!どうしよう!!

じーっと凝視してたらそれに気づいたエイパムが怪しい人を警戒するようにゴールドの陰に隠れた。

あれ、見すぎだったかな?


「(イミテさん、さっきからゴールドのことばっかり見てるでやんすけどまさかホントに…。)…え、えーとでもモンタージュをつくったからワニノコを盗んだ犯人はきっとすぐ見つかるでやんすね。」

「ゴロウ、そのモンタージュな、…ウソだ。」

「えーーーーー!!」


ゴロウくんの声が静かな夜に響き渡る。

お笑い芸人になれるんじゃないかってぐらいのいいリアクションだ。


「警察なんかにまかせておけねー。ヤローはオレがこの手でとっちめてやるぜ!なあ、バクたろう!」


バクたろう、と呼ばれたヒノアラシの背中をなでて彼は堂々とそう言った。

…自信過剰。


「実力以上に思い上がるやつは自滅する……」

「え?イミテ先輩なんか言いました?」

「ううん、なんでも。」


前にレッドがグリーンに言われたって言ってた言葉を思い出して、無意識のうちに口に出してしまっていた。

うーん…でも今の彼にはぴったりな言葉な気がするなあ。


「…てことでだ、これから本物のモンタージュを作るぜ、俺用に。ゴロウ、パソコンもってんだろ!?たのむ。」


「そーそー、そーゆーイヤミな目だよ。」とかなんとか言いながら、モンタージュ作りを始める彼ら。

私はゴールドが警察でつくったらしいモンタージュを手にとって見てみる、と。


「……」


これはひどいだろう!

小さい子が描いたラクガキみたいな顔してるんですけど!


唖然としていると「できた!」という声が聞こえて、ひょっこりとパソコンの画面を覗いてみる。


「あらま!このモンタージュと全然違うじゃん!」

「あらまって…ぷぷ、イミテ先輩、おばさんみたいな反応しますね!」

「この子、犯人の顔についてウソの証言してましたよって、今すぐ警察にバラしに言ってもいいんだけどなー。。」

「じょ、冗談っスよ。やだなあ。」

「…。それにしても、美形だね!この子!」

「え?」

「え?目鼻立ちくっきりしてるし、目は切れ長だし。顔整っててかっこいいじゃない。」


まるでグリーンみたいな系統の顔してる。美形、美形。


「イミテ先輩、こーゆーのがいいんスか!?全然憎たらしさしかないじゃないっスか!俺のが素直で良いヤツなのに!嫉妬しますよ!?」

「嫉妬って…」


むすっと頬を膨らませるゴールドはなんだか小さな子供みたい。

最初は礼儀知らずの自信過剰な女好きって印象しかなかったけど(え?ひどい?)、先輩を慕う後輩って感じで見るとなかなか可愛いものだよね。

慕ってる先輩が他の子を気にかけててとられちゃうみたいで嫌だ、って感じの心境なのかな。

ポケモンでいうなら、元からの手持ちポケモンが、新しくきたポケモンにトレーナーをとられちゃうんじゃないかって、ハラハラする感じ?


………あれ?待って。そもそも私、彼に慕われるようなことしたっけ?

ジムバッジ見せたぐらいで彼の前ではバトルしてないし、私がポケモンリーグ入賞者だってことも知らないでしょ?

後輩として嫉妬するっておかしくない?え?
ちょっと待って。今の、どういう意味??



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