短編

□ambush
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少しだけ、

期待してもいいですか?





【ambush】





昼休み。

「いい天気だねえ。」


お昼ご飯を食べ終わって空を見上げる。


「うん。お昼寝日和だね。」

なんとものんびりした口調で目の前にいる親友―…、イエローがそう返す。


今私達がいる窓側の席。

ここは日差しがちょうどいい感じにあたって特等席なんだ。


「屋上でも行って、お昼寝する?」

「うーん…、階段のぼるのめんどうだからここにいようよ。」

「あー、たしかに。」

「学校にエレベーターとかつけてほしいよね。」

「いやいや、人多すぎて絶対はいらないよ。」

「あ……そっか。」

「結局今のまんまが一番いいんだよね。」

「そーだねえ。」


そう言って私達はまた空を見上げる。

窓越しに見る雲は、なんだか白いフィルターがかかったように見えて、それはそれでキレイだった。



「アンタ達、ずいぶん平和ボケした会話してるのねぇ…。もっと学生らしく恋バナの1つや2つできないの?」


突然後ろから声がして振り向くと、ブルーさんが立っていた。

彼女は同じ部活の先輩で(少しサボリ癖があるけど)、私もイエローも彼女のことをすごくよくしたっている。


優しくて美人で頭もよくて、文句のつけどころがないんだ。

あ、怒らせると怖いけどね。



「ブルーさん、こんにちはー!」

「どうかしたんですか?」


ブルーさんは1つ年上だから、教室もこの上の階にある。

彼女がわざわざ私達のクラスに足を運ぶなんて珍しいな。



「これ、渡したくてね。」


そう言ってブルーさんは私とイエローの目の前にそれぞれ、可愛らしい紙袋を置いた。



「……?」

「中身はクッキーよ。手作りだから美味しいか分からないけど…。」

「え!すごい!ありがとうございます!」


憧れのブルーさんの手作り…!

さっそく開けて食べようとしたら「マズい顔されたら嫌だから家で食べてちょうだい。」と言われた。

早く食べたいのに…!



「それにしても急にどうしたんですか?」

「僕達、誕生日でもないのに…。」


私とイエローが首を傾げてブルーさんを見たら、彼女は鳩が豆鉄砲をくらったような、そんな顔をした。



「アンタ達、それでも女の子?」

「あ、はい。」

「一応…。」


ブルーさんははあ、とため息を1つついて、バン!と机をたたいた。



「今日は3月14日!ホワイトデーでしょ!?」

「「あー…」」


おんなじような反応をした私とイエロー。

そういえば今日だっけ。


バレンタインデーほど盛り上がらないから、つい忘れちゃうよ。


「これ、バレンタインのお返しってことですね!」

「なるほど!」


「そうよ。まったく、アンタ達は……、」


ブルーさんは呆れながらイエローの席に足を組んで座って、少しニヤツキながらこっちを見た。
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