短編

□悲しい心
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「先輩って、けっこうさっぱりしてるんスね?」


ゴールドと付き合い始めて1週間。

唐突に、そんなことを言われた。



「え、そう…かなあ?」

「だって電話も遊びの誘いもいっつも俺からで、先輩からくれたことないし。」


彼は少し口をとがらせて言う。



「(言われてみれば…そうかも。)」


こんなこと言われたの、初めてだ。

たしかに私は、ゴールドに自分から電話したことも、遊びに誘ったこともない。


言われて気づいたってことは、無意識なんだろうけど。




それはやっぱり……、好きじゃないからなのかな?



だから、声を聞きたいとも思わないし、会いたいとも思わないのかな…?




「なんか俺、先輩に愛されてない気がする。」


はあー…とため息をつきながら、ゴールドはクッションに顔をうずめる。


ちなみに、今は彼の部屋でデート中だ。



“そんなことない!好きだよ?”


たった一言、そう言ってあげれば、彼はどれほど喜ぶんだろう。

きっとすごくすごく喜んでくれる。



「………。」


それなのに、言葉がつかえてでてこない。



「…先輩?」


ゴールドも不思議に思ったみたいで、顔を上げて、私の顔を不安そうにのぞきこんだ。



「私……、」



やっぱり、好きじゃない。

そう、心が叫んでいるのに、気がついた。


無視、できなかった。



自分自身の気持ち、分かったのに…。



「………私、ね。自分から誘うのとか苦手でさあ…。ごめんね?」


また、嘘をはいた。

1人ぼっちになるのが怖くて。


すがりついた。



「だからゴールドが電話くれたり、誘ってくれたり……本当に助かってる。」



私がそう言えば、ゴールドは笑顔になった。


「よかった!あんまり誘いすぎて、うざがられてたらどうしようかと思ってたんスよ!」


無邪気に。

本当に、無邪気に。


私のさっきの言葉、これっぽっちも疑ってないんだろうな。

本当だと、思ってるんだろうな。



「じゃあ、先輩!今度は海行きませんか!?」


ゴールドのまぶしいほどの笑顔を、直接、見れなかった。



ああ…、なんだか罪悪感でいっぱいだ。










堕ちて、そこは闇
(私は、本当にずるい)
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