短編

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カレンダーにつけられた赤丸に目をやって、私は、はあとため息をついた。

きっと、今年も……。







【アザレア】







扉を開けた瞬間、
目に入ってきたのは鮮やかな赤。


「え……」


時が、止まった。

最初は幻を見ているんじゃないかと思った。

あまりに会いたくて会いたくて、会いたい気持ちが強すぎて、私の脳が勝手に作り出した幻影かとも思った。

大げさに聞こえるかもしれないけど、本当にそれぐらい会いたかったんだ。



私が止まったままでいたら、彼は困ったように頬をかいてから、苦笑い。


その表情に、私の記憶に焼き付いている彼が重なった。



―ねえ、本当に……?



「レッド…!」



そして、次の瞬間その胸に飛び込んだ。

と同時に、なんだか目の奥が熱くなる。


温かい。
レッドの温もりだ。



よかった。

無事帰ってきてくれて。

また、こうして会えて。


本当によかった。



レッドも最初は戸惑っていたけど、少ししてフッと笑い、片手で私を引き寄せながらポンポンと、頭を二回撫でた。



「ほら、泣くな泣くな。」

「泣くわけないでしょ…!」


でもさっきから視界が少し歪んでいるのは事実。

涙目になってるな、って自分で簡単に分かったてたけど、認めるのは悔しいからちょっと嘘をついてみた。






すると、スッとレッドの手が私の目に触れて、しばらくして離れたそれをみるとほんのりと水滴がついて…。

バツが悪くなって、私は笑う。




「…帰ってこないと思った。忘れてるかと。」

「いやー、実際忘れてたんだけど、ピカ達が教えてくれたんだ。」

「なるほど。」


思わず笑ってしまった。

自分の誕生日を手持ちのポケモンに教えてもらうなんて、鈍感なレッドらしい。

トレーナーよりポケモンのほうが、全然社会性があるみたいね。




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