哀歓善戦

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「お前らー!到着したぞ!グレン島だ!」


船乗りの大きな声がレッド達の居る船員用の部屋の前の廊下に響いた。


「やっほー!ようやく陸だ!!」


一目散に部屋を出て走っていったのはゴールド。

船酔いから解放されることが嬉しいのだろう。


「先に荷物をまとめろ!」


次いでグリーンが部屋から出て、ゴールドに対してそう声をあげるが、すでに彼は廊下にはいなかった。


「はあ…」


思わずグリーンはため息をつく。


「振り回されてんなー、グリーン。」


それを見て楽しんでいるかのような表情をうかべて、レッドも部屋からでる。


「おつかれさまです、皆さん。」

「ゴールドは元気だね。部屋の中まで声が聞こえた。」


隣の扉が開いてイエロー、イミテと続いた。


ガチャリ。

シルバーのいる部屋の扉が開いた。


「あら。皆そろってたの?」


出てきたのはブルー。


「ブルーさん、なんでシルバーさんの部屋から出てきたんですか?」

「船の揺れ方からしてもうすぐグレン島に着くと思ったから、先にシルバーの様子を見てたのよ。動けるかどうかをね。」

「水の能力のおかげで波の揺れ方が分かったのか?」


興味をもったようでグリーンが聞く。


「いいえ、無関係よ。能力じゃなくて、経験から分かったの。」

「経験…?」

「“商品”として仮面の男のところにいたとき、移動のためによく目隠しされて船に乗せられていたから。」


皮肉にも、目隠しをしていたせいで波の揺れ方を身体で敏感に感じ取ることができた。

海が荒いときの船の揺れ方、穏やかなときの揺れ方、出航の時の揺れ方、そしてもちろん、港についた時の揺れ方も。



「…そうか。シルバーは?」

「ここにいる。」


ザッ、とシルバーはズボンのポケットに手を突っ込んで、ブルーの後ろに堂々と立っていた。


「大丈夫なのか?身体は。」

「そんな柔じゃない。」

「ま!無理すんなよ。」


レッドは明るく言うと「さて…行くか!」と笑って続けた。














「…ということだ。3チームに別れて行動する。」


グレン島に上陸してすぐ、グリーンは地図を広げて、昨晩レッドとイミテとたてた計画を説明していた。


「姉さん。仮面の男は用心深い。きっとグレンタウンとは正反対の東に向かうハズだ。」

「そうねえ…。じゃあ、アタシとシルバーは東を調べて、」

「待て。」


やはりブルーとシルバーが一緒に組むのは当然のことだと思っていたらしく話しを進める彼ら。

グリーンが口をはさみそれを止めた。



「もう振り分けも完成している。レッドとイエロー、イミテとゴールドとシルバー、俺とブルーだ。」


淡々と言うグリーンに、もちろんシルバーか異論を唱えないはずがない。


「お前!勝手に決めるな!」

「これが一番最良なんだ。」

「俺はコイツと一緒なんてお断りだ。」


シルバーはゴールドを一瞥して言う。


「ああ?てめえ、俺のこと見て言っただろ!言っておくがなあ!お前を船まで背負ってやったのは俺なんだぞ!」

「運んでくれと頼んだ覚えはない。」

「んだとコラ!」


「2人とも落ち着いてください!」と言い争いを止めようとするイエロー。

それを見ながらブルーはふーん、と1人、感心していた。


「(それぞれのチームにレッド、イミテ、グリーンがバラけて、指揮と力のバランスをとれるようにしてる。それに、シルバーの闇の能力を考慮して3人のチームにいれた…ってとこね!)」


シルバーの両肩にブルーがポンッと手を置いた。


「悪くないじゃない。アタシはいいわよー?それで。」

「姉さん…!」

「大丈夫よ。いくらペアでもアタシはこんなユーモアのない人に惚れたりしないから!」

「…。」


シルバーがそういうことじゃなくて…、という顔でブルーを見ているが、彼女は華麗に気づかない振りをする。


「…姉さんに何かあったら承知しないからな。」


ギロリとグリーンを睨むシルバー。

ブルーはホホ!と楽しそうに笑っていた。



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