哀歓善戦

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その日の朝早くに馬車は止まった。


「着いたわ!ここよ!アタシのオススメの観光地!」


馬車から一番に降りたブルーは、日差しの眩しさに、思わず手をおでこの上に当ててそれを遮る。


「へー!綺麗な街ッスね。いかにも観光地って感じで。」


次いで馬車から降りてきたゴールドは感嘆の声を上げる。

マサラタウンから丸一日馬車で移動する間ちょくちょく寝ていたため、もうすっかりいつも通り元気だ。


「わあ!ここで今日1日自由に過ごせるって素敵ですね!」

「はは。今まで修業したり、トラブルがあったり、なんだかんだで毎日何かやってたもんな。」

「なにそれ、かわいそうに。どーせこの堅物さんが、遊ぶ暇があるなら修業しろ、とでも言ったんでしょう?」


ブルーはチラリとグリーンに目をやり言う。


「ブ、ブルーさん!そんなことないです!」

「オホホ。アンタはいい子ね。…イミテも早く降りてきなさいよ。」


気持ちが高ぶっているブルーの言葉に促されるように、イミテも馬車から降りる。


「…。」

「?なんだか不機嫌そうね。」

「いや?別に。」


ブルーの言葉にイミテはしらっと返して続けた。


「ブルー。観光の前にまずは武器の調達ね。」

「そんな重たいもの後でいいわよ。観光できなくなっちゃうじゃない。」

「良いものは早く売れちゃうものでしょう?買った武器をいったん宿に置かせてもらえばいいし。」

「…アンタ、その計画的なとこグリーンに似てるわね。めんどくさい。」


どうやらブルーは今すぐにでも観光にいきたいようで。


「…仕方がない。宿はアタシが決めるからね!」


渋々といった様子で了承し、まずは武器屋に向けて歩き出した。









この街で一番大きな武器屋に入り、ずらりと並ぶ商品をまじまじと見てレッドが言う。


「武器の調達…といっても、消耗品はイミテの矢ぐらいだけどな。」

「レッドさんは剣で、グリーンさんは刀、ゴールドさんは棍棒ですもんね。ブルーさんとシルバーさんの媒介も武器じゃないものですし。」

「あら。主要な武器以外にも使えそうな物は買っといたほうがいいわよ。例えば…あ、この煙玉とかいいじゃない。」


ブルーが近くにあったそれを適当に手にとり、レッドに手渡す。


「うーん。俺、こういうの嫌いなんだよな。」

「なんで?」

「煙で前が見えなくなるから。」

「?バカねえ。だから敵の目くらましにもなっていいんじゃない。」


すると、レッドの手からひょいとグリーンが煙玉を取り上げた。


「コイツにやたらめったら変な武器を渡すな。」

「?どうして?」

「前に修業で試しに煙玉を使ったとき、風向きも考えずに投げたから自分に全部煙がかかって逆効果だったんだ。」

「レッド、アンタ…。」

「ほ、ほら!俺、こざかしいの嫌いだからさ。」


グリーンが煙玉を棚に戻そうとすると、ブルーがそれをひょいと取り上げイミテに渡した。


「じゃあ、イミテに渡すわ。アンタ、武器が弓だから近距離戦になったときに大変でしょ?」

「私、弓以外にも護身術程度の武術なら使えるけど。」

「もー!めんどくさい人達ばっかりね!いいからとりあえず持っときなさいよ!」

「…。」


煙玉なら軽いし持っておいて損はないか、とイミテはそれを買い物用のかごの中に入れた。


「つーか、こういう武器が一番必要なのはイエローだよな。」


イエローは回復が中心のため、主要な武器を持っていない。

一応護身用にと現在小型のナイフは持っているのだが…、敵の本拠地に行くのにその装備だけではあまりに準備不足だろう。


「そうね!だったらアタシにまかせて!アンタにぴったりの武器選んであげるわっ。」

「え!」

「といっても、イエローのことあんまり知らないから、イミテも手伝ってちょうだい。」

「もちろん。」



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