哀歓善戦

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その後。

彼らはブラブラと街を軽く見て回り、日が暮れる頃にはホテルに戻ってきた。


「部屋は2つ借りたから。はい。これが男性陣の鍵ね!」


ブルーが鍵をレッドに手渡す場面を目撃して、シルバーは1人怪訝そうな顔をする。

他の人達と同じ部屋というのに不満がありそうだ。(主にゴールドと同部屋というところに。)

そんな様子に気づいたブルーはウインクをして言う。


「シルバー。あたしと離れ離れになってさびしいのは分かるけど、そろそろ1人で寝られるようにならないとねー!」

「…姉さん。変な冗談やめてくれよ。真に受けそうな馬鹿が1人いるんだから。」

「おいシルバー!てめえ俺様に喧嘩うってんだろ!ああッ!?」

「ふん。やはり自覚はあるんだな。」

「んだと!?てめえ、昼間ゲームに勝ったからって調子にのりやがって!表出ろ、こんにゃろー!!」

「負け犬の遠吠えにしか聞こえないな。」


また始まった2人の喧嘩に、レッドは苦笑しグリーンはため息をつくとお互いに顔を見合わせた。


「ほら。ゴールド。観光のときもずっとお前らつっかかってたんだから、ホテルでぐらい穏便にすませられないのか?」

「だってコイツが!」

「シルバー。お前もだぞ。変に挑発するな。というか相手にするな。」

「…ふん。」


「あらー♪意外と頼もしいじゃないアンタ達!だいぶ扱いなれてきたみたいね。シルバーのこと、まかせたわよ。」


ブルーはニヤニヤと意味深な笑みを浮かべて続ける。



「夕飯はあと2時間後だから。またここに集合ね!それまで自由!さー、お風呂はいりにいきましょ!」


ブルーはイミテとイエローにそう呼びかけて一番に歩き出した。


「すっかりブルーさんのペースですね。でも楽しそうです。」

「このホテルの構造とかシステムとか知ってるのは彼女だから仕切ってくれて何よりだけどね。」

「んじゃ、俺らも一旦部屋に行くか!」


男性陣もぞろぞろと歩き出す。


「ゴールド。」


直後、イミテが落ち着いた口調でゴールドのことを呼んだ。


「……なんスか?イミテ先輩。」


ゴールドも足を止めて振り返り、笑顔とともに言う。

いかにも静かな落ち着いた口調で。


彼女が自分を呼び止めた理由なんて分かりきっているくせに。



「食事のあと、予定いれないでもらえるかな。時間つくってほしいんだけど。」


1つ1つの言葉がしっかりとした、凛とした声。

そこには迷いも戸惑いもない。


「了解。」


ゴールドはへらっと笑った。

……だから、彼の心が穏やかではなかったことには誰も気づかなかった。


















その後、お風呂に向かった女性陣。

3人で露天風呂につかって数十分がたった頃。


「僕、そろそろ出ます…」


イエローはつぶやくようにそう言って、フラフラとした足取りで湯船から出て行った。


「のぼせちゃったかな。イエロー。」


心配そうにその背中を見送るイミテに、ブルーは少々呆れた様子で言った。


「そりゃあこれだけ長くつかってればそうなるわよ。アンタ、よく平気ねえ。」

「ブルーも平気そうじゃん。お互い様。」

「あたしはちょくちょく出たり入ったりしてるもの。アンタはずーっとつかりっぱなしじゃない。見てるだけでのぼせそうだわ。」

「?そう?」


イミテにその自覚はない。

極めてお風呂好きな彼女にはこれが普通なのだから。


「ブルーものぼせる前にでれば?私はもう少し入ってるけど。」

「いいえ。ここで出たらねばった意味がなくなっちゃうから。」

「……どういうこと?」

「イミテに聞きたいことがあったのよ。」


ブルーはばしゃんと、露天風呂の湯船の縁に腰掛ける。

ここからは長い話になりそうだから、こうでもしないとのぼせてしまいそうだった。

せっかくイミテと2人きりになる機会が得られたのに(そのためにイエローが先に出るのを待っていたのだ)、それを台無しにするのはさけたい。



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